大手SaaS企業における事業加速のためのM&A候補探索
急成長する大手SaaS企業の戦略部門と連携し、各事業部の成長を加速させるM&A候補の探索を実施。5つのテーマについて事業仮説の定義からロングリスト作成、事業部とのインタラクティブな絞り込みまでを支援した。財務指標だけでなく、組織文化や経営者の人物像まで含めた多面的な評価を通じて、事業成長の選択肢を具体化した。
業界
SaaS・テクノロジー
テーマ
M&A候補探索・事業成長戦略
期間
約2.5ヶ月
支援範囲
戦略検討・リサーチ・リスト策定
候補企業の財務・沿革・組織文化まで多面調査をAIで加速
Challenge
背景と課題
事業が急拡大するフェーズにおいて、各事業部の成長をさらに加速させるための手段としてM&Aが選択肢に挙がっていた。しかし、どの領域でどんな企業を買収すれば自社の事業とシナジーが生まれるのか、その具体的な探索と検証のプロセスが整備されていなかった。
通常のM&Aアドバイザリー(FA)は、ディールの成立を前提としたサービス設計になっている。しかし、このフェーズで必要だったのはディールの推進ではなく、事業仮説に基づいて「どの方向に伸びるべきか」を検討するための材料づくりだった。買収ありきではなく、事業成長の選択肢としてM&Aを位置づけ、フラットに探索を進められるパートナーが求められていた。
加えて、テーマによってはニッチな領域も含まれており、対象企業のリストアップだけでなく、業界構造の理解や各社の文化・組織・経営者の特性まで踏み込んだ調査が必要だった。
事業仮説の具体化 — 各テーマで「何を買収すると、なぜ伸びるのか」の論理を精緻化する必要
FA型アプローチとの不適合 — ディール成立前提のサービスではなく、事業成長の選択肢を広げる探索が必要
多面的な企業評価 — 財務・事業要件だけでなく、文化・組織構造・経営者の人物像まで含めた評価
テーマの多様性と並列運営 — ニッチ領域から大きなカテゴリまで、異なる性質のテーマを同時に進行
Approach
アプローチ
テーマごとの事業仮説と評価基準の定義
戦略担当者と密に連携し、5つのテーマそれぞれについて事業仮説を具体化した。買収によってどの領域がどう伸びるのか、買収先に求める要件は何か、自社が提供できる価値は何か——この三点を軸に、各テーマの探索方針と評価基準を定義した。
多面的なロングリストの作成
定義した基準に基づき、テーマごとにロングリストを作成。規模はテーマの性質によって10社からおよそ70社まで幅があった。各社について事業内容や財務的な要件だけでなく、設立からの沿革、組織文化、経営者の経歴や評判といったソフト面の情報まで調査し、一覧化した。買収後の統合(PMI)で最も問題になるのは文化の不一致であり、上流の段階からこの観点を組み込んだ。
事業部とのインタラクティブな絞り込み
ロングリストを起点に、事業部との議論を繰り返しながらショートリストへと絞り込んだ。事業部から「海外にこういうベンチマークがある」と提示された企業に近い国内候補を探索するなど、双方向のやり取りを通じてリストを動的に更新。単なる納品物としてのリストではなく、事業部の思考を前に進めるための対話ツールとして機能させた。
買収後の事業成長シナリオの検討
候補企業を評価するだけでなく、仮に買収した場合の事業の姿——どんな成長曲線を描けるか、どのようなシナジーが実現しうるか——を事業部と共に議論した。これにより、リストの評価が「スペック比較」から「事業の将来像の検討」へと昇華した。
Outcome
成果
5テーマ
探索対象の事業領域
10-70社
テーマごとのロングリスト規模
3テーマ並列
同時進行の運営体制
2.5ヶ月
集中支援期間
3テーマを並列で推進し、事業部ごとに異なる粒度・異なる性質のM&A候補を可視化。各事業部が「どこを攻めるか」の議論を、抽象的な方針レベルから具体的な企業名と事業シナリオのレベルに引き上げることができた。
支援期間中に買収の意思決定に至った案件はないが、探索したテーマの中から後日買収に至った事例が生まれた。ロングリストと事業仮説の検討が、その後の意思決定の下地として機能した。
事業仮説の定義→ロングリスト→ショートリスト→事業シナリオという一連のプロセスが、戦略部門のM&A検討のフレームワークとして残った。
Client Voice
“スピードと精度のバランスが絶妙。夕方に議論した内容が、その日の夜にはポイントを外さずに形になって返ってくる。同期と非同期のコミュニケーションの選び方もセンスがよく、こちらの仕事のリズムを崩さない。”