2026年9月6日
節句にピクニック🧺
Cobe Associe は、戦略と技術の問いを現場で検証可能な仮説に変える。
1年が締まると、色々とやらなければいけない雑事がある。暦の〆は大掃除、会社の〆は納税である。これから気持ち良く過ごしていくためには、隅々まで丁寧にやっておくことが大切だ。たとえ気が向かなくても、です。
先週、取引銀行をハシゴして、法人口座の記帳をした。残高確認から振込まですべてネットで完結するありがたい時代に生きているので(SMBCの法人ネットバンキング名称『Web21』は前時代の遺物)、すっかりご無沙汰してしまっている。
神戸地銀の本店ATMで何度かトライするも通帳がはじかれ、しぶしぶ窓口に行く。「通帳の磁気が壊れているようで、少々お待ちください」。番号札をもらいソファに腰掛けていると、後ろではジャケット羽織った初老男性が「松茸の季節だね」と若手女性部下をしつこく食事に誘っていた。時代と季節が交叉している場所だ。
私が高校時代に古典でお世話になったのは、季節の話をたくさんする先生だった。
紀貫之の和歌がテーマに上がれば平安時代の春の様子を描写し、杜甫が冬の長江に遠い故郷を想う漢詩を紹介するときには、寒々しい中国の水辺をイメージさせることに時間を惜しまなかった。
教科書には載っていない内容を、教員用ハンドブック・指導要領には載っていない方法で教えてくれる先生のことが、私は大好きだった。(彼が受け持つクラスは不思議に進学実績が抜群だった)
奇数月がくると、その先生は必ず節句の話をする。
年が明けると人日の節句(1月7日)、卒業式が近づくと上巳の節句(3月3日)、GW前後には端午の節句(5月5日)、「たなばた、ではなく”しちせき”と読みます」と七夕の節句(7月7日)、夏休みが明けると重陽の節句(9月9日)、11月には「今月は節句がなぜかというと中国には五行説というのがあって・・」と解説が始まる。
中国の陰陽思想において、奇数は陽、つまり縁起が良い数。
節句はそれに対応していて、そのなかでも一番大きな奇数がダブルでくる重陽の節句は『もっとも縁起が良く、もっとも危険な日』なのだそうだ。
私たちが端午の節句に鯉のぼりを揚げたり、七夕の節句に笹・短冊を飾るように、重陽の節句には『登高』という習慣がある。家族や友人と一緒に高い丘に登り、茶菓や酒肴を楽しみながら邪気をはらうという。つまりハイキング・ピクニックDayだ。
昔のカレンダー表現では「1-3月が春、4-6月が夏、、」と3ヶ月区切りで季節を表現した。9月9日とはつまり、秋も深まっていよいよ冬が顔を覗かせる時期だったはずだ。そんな時期に行うピクニック、そして登った丘の上で熱燗、さぞ最高だったことだろう。
そんなことを考えていたら会社名を呼ばれ、磁気が復活した通帳に最新の残高が記されている。じっと数字を眺める。平日にピクニックしている場合ではなさそうだ。
執拗な誘いへの反撃として、女性は婚約者との週末旅行に話のテーマを切り替えていた。ぐっじょぶ。わたしも今週、仕事をしよう。
お便りをお待ちしています。
💼心惹かれたもの
ネパール政府災害基金:駐日ネパール大使館の公式サイトから案内があり、寄付しました。クレジットカードでも支払い可能です。日本でも熊本、千葉、福井、青森と日本も各所大変です。ひとりひとり、誰かのために出来ることをしましょう。 link
テスラ・Cybercab:乗ってみたい。このレベルの自動運転、日本で2030年までに使えるようになるかしら。トヨタの人はいま、この車両をバラし、ソフトウェアを隅から隅まで眺めているんだろう。
ダサスラ☆メーカー:勝負所のプレゼンテーションで使いましょう。魂のこもったダサさは相手を動かす。 link
Tamagotchi ring:たまごっち世代のみんな、指輪で遊べるようになったよ。10月6日まで事前注文受付中。 link
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
女王アリは1匹200ドル:ナイロビ空港で、男の荷物から2,200匹以上のアリが見つかった。湿った綿で栓をしたプラスチック管に詰められ、中国の収集家のもとへ数週間生きたまま運ばれる仕組みだった。昨年はベルギーの10代2人が約5,000匹を運んで捕まっている。パンデミック中に屋内趣味として広がったアリ飼育は、登録者700万人超のYouTubeチャンネルがコロニー内部の様子を自然番組ドキュメンタリーのように語ることで世界的な流行になった。ケニアで3ドルの女王アリが闇市場では200ドル超。「アリ界の虎」と呼ばれる大型種ほど狙われ、生態系への影響を昆虫学者は懸念する。不可思議な需要が、法律より先に国境を越えていく。link
8時間睡眠は19世紀の発明品:『8時間労働、8時間の余暇、8時間の睡眠』は元々労働運動のスローガンだったが、そのまま生理学の常識になった。人工照明をほとんど使わないタンザニア、ナミビア、ボリビアの狩猟採集民を調べると、夜の睡眠は5.7〜7.1時間で、昼寝で補うこともなく、夜明け前に自然に起きるという。産業化以前の平均は6.4時間という推計もある。睡眠と健康との関係を見た大規模研究の多くが、最適点は8時間よりやや短いことを示している。なお私は9時間睡眠が最適です。link
10周年を迎えたインド無料決済・UPIの課題:ムンバイの浜辺のココナツ売りにも、コルカタの煙草屋にもお決まりのQRコードがある。先月8/25に10歳を迎えたインド統一決済インタフェース・UPIのものだ。2016年以前は取引件数のほぼすべてが現金で、小銭がないと言い張る店が1ルピーの飴を釣り銭代わりに配るのも文化の一つだった。今や月間240億件の取引を捌き、インドにおける非現金取引の85%超がUPIを経由だ。銀行口座をアプリに紐づけるだけの単純さと、同年に始まったJioの激安データ通信が普及を押した。問題は、その処理が無料ではないこと。手数料ゼロを維持する費用を政府が負担し、銀行が隠れた手数料を吸い続ける構造は持続的なのだろうか。公共インフラにつきものの宿題だ。link
“世界史上最大の石油取引”は本当か?:8か月前、トランプはマドゥロを特殊部隊に拉致させブルックリンの拘置所に放り込んだ。今度はその副官デルシー・ロドリゲスと石油の取引を結び、本人たちはこれを「世界史上最大の石油取引」と呼んでいる。シェブロンが金を出し、現地民間企業NABEPが17油田、650億バレルの採掘権を得て、米国防総省が同社株35%と産出物の優先購入権を100年分持つ。ロドリゲスによれば日産150万バレル増になるという。実現するのか?石油収入が旧政権の残党に流れる限り、民主化への移行を阻む政治インセンティブが生まれるから。資源は国家の麻薬。link
西ベンガルで繰り広げられる文化戦争:この5月、モディ首相率いるBJPが西ベンガル州で初めて選挙に勝った。世俗的で左派寄りかつビジネスには不振という、BJPが苦手とする州だ。最初100日での大改革を約束した党は、経済再建より文化戦争のほうが簡単だと気付き、お金の問題を全て先送りしている。イスラム教徒が3割を占める州で新首相は「ヒンドゥー教徒のために働く」と宣言し、公道での礼拝を排除し、ハラール肉の販売を締めつけた。学校給食から卵を外す試みは、肉好きのベンガル人ヒンドゥー教徒の怒りを買って撤回。一方でタタの工場誘致は進まず、州歳入の57%は中央政府頼み。腐敗への反発によって政権を獲得したはずが、政権を維持するために現地の腐敗した寝返り議員を抱え込む。だから政治家は嫌いなんだよ。link
ウクライナは戦場で気球を飛ばす:1783年にフランスで発明された気球がまず活用されたのは戦争だった。観測所として、後には係留式の対空障害物として。いま最も熱心に使っているのはウクライナで、昨秋以降1,000個以上をロシア領内に飛ばし、爆弾投下や防空網の撹乱、無線中継に使われている。最新の工夫は、気球にドローンを吊るして運ぶことだ(ガンダムのカタパルト方式である)。今年5月には米国製ホーネットを約42km運び高度8kmで放ちつことで、輸送中の電池消費をわずか5%に留め、地上発射なら150kmだった航続距離を2倍・300kmにまで伸ばすことに成功している。ロシアも真似をしているが、風が西から吹くのは動かせない地球の原理だ。枯れた技術が現実を動かしている。link
気候変動が大気循環そのものを変えているのでは?:気象学者・Tim Palmerが住む南イングランドの今夏は、記録的な熱波と無降雨が続き、線路の歪みまで発生したという。温暖化で大気が湿り、冬は雨が増え夏は乾くという熱力学的な変化はよく知られているが、今夏に起きて干ばつの直接原因は晩春から居座り続けた高気圧である。温暖化がジェット気流や高気圧の形成といった大気の力学そのものを変えており、私たちの気象モデルはそれを捉えきれていない。彼は『世界中のスーパーコンピュータと研究者を共同投入して、超高解像度の全球気候モデルをつくるべきだ』と説く。私も賛成だ。気候危機について、私たちの残された猶予は少ない。来年はもっと強力なエルニーニョ現象の発生が予測されている。災害が起き、甚大な被害が起きないと私たちは腰を上げられないのだろうか。 link
蓄電池が電気の値段を決める:夏の夕方、家庭のクーラーが一斉に動き始める時間帯の電力は従来、ガス火力・石炭火力発電所が担ってきた。年間の86%以上は止まっていて、動く数時間だけ効率無視で発電を吐き出す調整弁だった。米カリフォルニアとテキサスでは、その役目を蓄電池が徐々に代替しつつある。一度設置してしまえば、昼に太陽光の余剰電力をパンパンに吸い込み、日没後静かに放出し続けてくれる。2024年のカリフォルニアでは夕方ピーク電力の8.6%を電池が供給し、2025年には6,000MW超が常態になった。蓄電池由来のピーク電力価はガスタービン由来の1/2-1/3に留まる。日本の蓄電池市場はやや荒れだが何年か遅れて同じ追いつき方を見せるだろうか。link
余暇は誰のものだったか:中世ヨーロッパには年141日の公式な祝日があったと経済史家・ルヴァスールは分析する。1年の4割が休みとなる計算だ。人類学者によれば狩猟採集民の労働は週15〜20時間で、産業革命までこの水準はほとんど変わらなかったともいう。昔の人類が手にしていたこの膨大な自由時間は今どこに消え去ったのだろうか。答えは単純で、スクロールと動画とゲームに吸われ、10代は1日4〜5時間を広告まみれの画面に費やしている。祖先は祝祭でどれだけ騒いでも誰の売上にもならず、そんなことを気にする人はいなかった。現代の企業は、超富裕層のレジャー需要を取り込むことに必死である。余暇のコントロール権が個人から企業へ移ったいま、休日に何もしないことはどこまでも難しくなっている。link
📙本
戦争の悲しみ(バオ・ニン):ベトナム戦争・抗米戦争を現地兵士視点で描いた小説を初めて読んだ。圧倒的不条理を淡々と、かつバグった時系列で描いていく。筆致は淡々と、しかし迫力がある。一緒に収録されている『暗夜(残雪)』も味わい深い不条理短編集で、あわせて読んで、ふと目を上げると日本の平和が実感できる。 link
その後の日々、空は鳥の大群で真っ黒だった。米軍の去ったあとには雨季が来た。森は洪水になった。戦場は泥沼になり、濃い茶色の水には真っ赤な膜ができた。水面には多くの人間の死体が仰向けになったりうつぶせになったりして浮かび、焼け死んだ動物のふやけた死体も、砲撃でずたずたになった御木の破片と一緒に漂っていた。水が引くと、強い日光のもとに、何もかもが腐肉の匂いを発する泥に包まれ、そのうえプルプルした膜に覆われているように見えた。あのときキエンは谷川の岸を這いずり回ったのだった。傷口から絶えず血が出た。ぬめぬめした冷たい血、死体から出るような血だった。蛇などの動物がキエンの体の上を遣った。死神の手にさわられているようだった。 (p179)
ことぱの観察:友だちや恋など、ありふれた言葉たちを詩人・向坂くじらさんが丁寧に”定義”していく。恋や友だち、愛について。真剣な書き手です。 link
「詩は好きですか」と訊かれたら、やっぱり「まあ、はい、そうなりますかね・・・」と答えることだろう。説明しきれないことまで読み取られてしまうのをおそれるから、だけではない。詩はもはや自分の一部になってしまって、好きかどうかを自分自身で判断できないからだ。好きになるためには、まずほどほどであることが必要だ。対象に入り込みすぎず、あくまで自分の立つ場所から「好き」をはじめる。なにかを好きになることが自分を形作るとしても、それは自分とそのものとの境目がなくなることを意味しない。わたしが椎名林檎さんではないように、そしてほかの好きな人の誰でもないように。
🧩感じた/感じている
「事実と推測を切り分けろ」とみな言うけれど、それは思うよりも難しい。推測は事実風味に記述することができるし、どんな事実も人間の五感を介する以上推測の疑いは晴れない。
何かを失ったとしても、常にゼロから、また始めたらいい。絶望することは、その原因が起きたことそのものよりも、悲劇になりうる。
ドイツにもポピュリスト右派政党が台頭している。唯一の重しがとれたら、EU内でのドンパチがまた始まるかもしれない。
🍵関心事
次の危機はどこから来るか。エルニーニョ現象は来年強度が高まると予想されていて、それが正なら、今年よりも甚大な気候災害が日本と世界を襲うはずだ。他にも、地震や感染症、金融危機、更なる紛争。なんだって起こりうるのだ。
長期金利の行方。とんでもないことになり得るのだけれど、経路が難しいから、多くの人が認知の外に追い出している。危険だ。
9月のテニス。全米オープンがいよいよ2週目で、月末は錦織圭選手登場のジャパン・オープン。
🥑活動報告
今年1年またしっかりお仕事するぞと、提案書をもりもり書き始めました。シルバーウィークが5連休????巻きで仕事を進めないと。お客さん先で気になっている課題が7つあり、うち2つほどは10月までにお仕事にしたい。
お便りをお待ちしています。
