2026年9月20日
借りて得る金、捨てる金💰
Cobe Associe は、戦略と技術の問いを現場で検証可能な仮説に変える。
先週バカでかい借金を申し込んだ。事前審査を通っているので問題なく実行されるはずだ。着金はだいぶ先なのだけれど、これまでに行ったどの借入よりも規模がでかい。二つ目のカンマから更に3つ数字が並ぶ借入申込書にハンコを押すことになるとは思っていなかった。
金を借りるのにこんなに悪いタイミングもない。長く続いた低金利時代は既に終わりを告げており、着実に「正常な金利ある世界」への回帰が進んでいる。
いやー、大変ですね。
マイナス金利時代には、無借金経営を続ける企業はその非効率さを弾劾され、高学歴サラリーマンは与信ぎりぎりで手の届くタワマンを買うことが奨励されていた。彼らに加え、AIを進化させ続ける責務を行った企業と爆発寸前の社会保障費をまかなう必要がある政府がこぞって現金を求めるいま、金利はスカイロケットしている。
その列の最後尾にひっそり並んでいるのが私だ。需要がある(かつ今後需要が増え続けることが見込まれる)商品を手に入れるためには相応のコストを支払わなくてはいけない。大学1年生が教養科目・経済学入門で学ぶ社会の大原則である。
しかし、金を課してくれる人がいるだけでもありがたいことである。本当にありがたいこと。
資本金300万で創業した2018年、法人借入の限度額は公庫の500万円だった。経営コンサルティングなんていう無資産の阿漕な商売に金を差し出す善人などいない。「中小企業は大事!雇用を守る!」という政治思想を多分に含む政府系金融機関がなければ、わたしの与信はゼロだったのだ。金利が高い?贅沢を言ってはいけない。贅沢が許されるのは歴史の暴力に耐えてきた強者のみだけだ。
そもそも、『目先の損得』だけで意志決定をすることが間違っているのだ。金利が高いなら絶対借りない!なんて稚拙な判断基準は捨て去らなくてはいけない。あらゆるものはバランスなのだ。
将棋の話でいうと、駒の損得は勝利に向けた重要要素だ。歩よりも香車、香車よりも飛車を持っていることが望ましい。そして飛車1枚よりも2枚のほうがよい。
しかし初心者がみな負ける理由もまたこれである。本来自玉を守らなくてはいけない、あるいは相手の王を攻めなくてはいけないところで、関係ない相手の大駒に目を向けてしまう。序盤ならまだいい。中終盤で大駒に拘るやつはゲームのルールを理解していないアホだ。
では将棋の中終盤では何をすべきなのか。まずは持っている駒を活き活きと働かせることである。
どんなにいい駒を持っていようと、攻めにも守りにも効いていないなら意味がないのだ。駒の性質を鑑み、彼らが輝く戦場に投入すること。あるいは彼らに輝いてもらえるように場を整えること。
そして最終盤に大切になるのは、なによりも速度である。
将棋は、相手よりも一手先に王様を詰ませれば勝ちだ。自玉が危うく、3手で詰まされるとしても、2手で敵玉を討ち取れるならそれでよい。詰ます瞬間にどれだけ戦力が少なかろうと勝ちは勝ち、どれだけ駒台に大駒があろうと詰まされれば即座に負けである。プロ棋士は終盤、速度を上げるため、あるいは相手の速度を下げるためにどんどん駒を相手に差し出す。藤井聡太六冠や伊藤匠二冠はこれが抜群にうまい。
2023年に行われた第36期竜王戦七番勝負はこの二人の対局だった。角換り腰掛け銀vs右玉で始まった第4局を制したのは先手番の藤井聡太竜王。最後は37手詰を読み切っての勝利だった。何より美しいのは、この37手詰めは『最後、歩を含めて一枚も持ち駒が残らない』こと。挑戦者・伊藤匠先生の猛攻を受け止め、駒台にあった7枚の駒(角1金1銀1桂2香1歩1)を次々に盤面に投入して勝利をもぎ取った。1筋・4筋・8筋と三つの戦場を俯瞰し、ギアを自在に切り替えるまさに名人芸。名局である。

さらに昨年のA級順位戦プレーオフ、永瀬先生は「金のタダ捨て」で勝負を決めた。3四に打ちこんだ金は、相手の馬で即とられてしまう。が、馬の位置をずらし、敵玉の逃走経路を塞ぐことに成功している。相手はこの金をとることができないが、放置することもできない。永瀬先生は金をタダで捨てることで、名人戦挑戦者になった。勝負師である。
ゲームをプレーするときには、フェーズによって欲望を切り替えなくてはいけない。それを自在にできるのが名人だ。よく言われるエリクサー症候群、ゲームの中なら笑って済ませられるけれど、現実ではそうはいかない。エリクサーにかかる相続税は相当高額だ。
さて、バカでかい借金。どう活かそうか。
私はもう疑いなきおっさんである。得を積み上げるフェーズはもう過ぎ去っている。これからはとにかく生活をイキイキとさせること、さらには最終盤に向けて徐々に速度を上げていくことが肝要だ。駒台にあるものはとにかく使い切るのが美しい。命と私の勝負である。
お便りをお待ちしています。
💼心惹かれたもの
Muse:Metaが投入してきた個人向けAIエージェント。電話かけといて!とかまでやってくれるなら課金するまである。コールセンターに繋がるまで1時間待つ、みたいな業務をお願いしたい・・・ link
甘太くん:この干し芋がうまい2026年第1位。最近の職場おやつは干し芋です。 link
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
スポーツ首都、1,000億ドルの争奪戦:10年前、ラスベガスに米国四大スポーツのフランチャイズは一つもなかった。2017年にNHL、2018年にWNBA、2020年にNFLのレイダースを次々招致し、さらにMLBのアスレチックスが続く。これはスポーツの商業化と地続きである。スタジアム周辺は複合開発の対象となり、試合やチームイベントを『観客を定期的に動かす広告』として使う。スポーツ調査機関の最新報告書によれば、スポーツスタジアム関連開発は今後15年で1,000億ドル超の投資を集めるという。リヤド、マイアミ、メルボルン、パリも同じような取り組みを進め、『世界のスポーツ首都』の座を争おうとしている。さて神戸。ジーライオンアリーナの周りに何か経済圏が生まれるだろうか。いまは交通の混乱があるだけだけど・・・ link
米国で進む蓄電池導入:2026年第2四半期、米国は20.2GWhの蓄電容量を新設し、四半期として過去最大を記録した。第二次トランプ政権の最初18か月で系統用蓄電容量は88GWhから165GWhへほぼ倍増。しかも第2四半期に設置された容量の74%超は、2024年のトランプ勝利州にある。アリゾナが6.2GWhで首位、テキサス、ユタが続く。気候政策としてではなく、急増する電力需要に対する信頼性の道具として蓄電が選ばれているのだ。2030年までの予測は683GWhへ11.5%上方修正。EPAが発電所の炭素排出基準を撤廃するなか、赤い州では着々と蓄電設備が整備されていく。脱炭素の看板を外したほうが進む脱炭素。看板よりもインセンティブだね。link
国連、メルカトル図法を捨てる:9月4日、国連は164対1でメルカトル図法を『イコールアース図法』に置き換える決議を採択した。反対したアメリカは「時間の無駄」だと切り捨てた(なおこの1週間前、オンタリオ湖をアメリカ湖に改名したのがトランプ米大統領)。1569年に航海用として設計されたメルカトル図法は、赤道から離れるほど陸地を大きく描く。この図法だとグリーンランドは一見アフリカと同サイズだが、実際はアフリカが14倍大きい(アフリカ諸国は新図法採択を強烈に支持してきた)。イコールアース図法は面積を正しく描ける特徴があり、それに従うとアラスカはぎゅぎゅっと縮む。球体を平面にする以上、何かは必ず歪む。学校の壁に何を貼るかは、私たちがどのように世界を見たい・見せたいのか、どんな誤りを許容するのかの選択でもある。 link

確かに米国が小さく見える。link 徐々に休み方を学ぶ中国:北京から近い河北省のリゾート・北戴河の複合施設アラニャ。昨年は460万人が訪れた。カイトサーフィンや瞑想等を行う施設からおしゃれな図書館まで、休暇施設などが並んでいる。書店には「休憩を取ることは合法」と書かれた冷蔵庫マグネットが売られている(欲しい)。中国の労働文化は『996(朝9時〜夜9時、週6日間)』と『寝そべり(躺平、タンピン)』の両極で語られがちだが、中流の大多数はその中間におり、働く時間と余暇のバランスをとりたいと考えている。河南省政府は8月、経営者に休暇承認簡素化と自ら全休暇を消化する模範を求めた。しかし経済減速が進む中、都市住民の平日余暇は2024年の5.91時間から2025年には3.66時間に減少してもいる。経済成長に緩やかな陰りが見える中、休息に生活の緊張が反映されている。link
闇市場化した中国・学習塾:摘発チームが営業中の店に踏み込み、警官が証拠写真を撮り、当局は音楽付きの動画を投稿する。麻薬取引?違法売春?いやいや、放課後の数学教室である。2021年により双減政策で営利目的での主要科目補習が禁止され、学習塾大手は時価総額の9割、約1,000億ドルを失った。だが学歴がものを言う中国で親たちの不安、つまり需要が消えることはなかった。北京の父親は息子が書道教室に通っていることにして数学オリンピックの塾に送り、富裕層は隠れて”違法進路カウンセラー”を雇う。長沙では113人の闇家庭教師の住所が公開された。闇市場化すると権力や金がものを言い公平性は失われる、その典型である。link
南アジア、Z世代が政権を打倒する:人口の半分が30歳未満のバングラデシュで2024年夏、公務員の割当制度への抗議が政権転覆に繋がった。6割が30歳未満のネパールでは2025年9月、エリートの腐敗と縁故への怒りがSNSで燃え広がり、政府がFacebookやYouTubeを遮断した瞬間に活動が急加速。首相は辞任、ラッパーの元カトマンズ市長が36歳で首相になった。名ばかりの民主主義と薄い説明責任で運営された政府、そして教育を受けた若者に仕事がない社会。政府が接続を切るほど怒りは増幅し、個別の不満は体制への挑戦に変わる。1960年代、西側諸国の若者反乱が社会規範を変え切るまでに数十年かかった。2100年の当たり前づくりがいま始まっているのかもしれない。link
9月。米大学新入生にとって試練の季節:ラスベガスからルイジアナの大学へ進学した17歳の新入生は、2週間後に母親へ「もう帰る」と送った。徒歩移動が持病に障り、初めてのパーティーは不愉快で、バイト先までの道も安全に感じられなかった。TikTokには「大学経験なんてどうでもいい。学位が欲しいだけ」と書いてオンライン課程に切り替えた。同じようなショート動画は大量に出回っており、コメント欄では30代以上とみられる大人たちが「なにゆーてんねん。耐えろや」と諭している。中退率自体は近年やや下がっているという。過去は恥の対象だった中退が、SNS市場の拡大で『売れるコンテンツ』になった。学費は上がり卒業しても職の保証はないのだから、いまここで一稼ぎ、となるのも合理的な判断なのかもしれない。苦労は価値の証明だという前提を共有できないのはどの時代の若者も同じだ。そもそも、彼らの大学教育への見立ては適切なのだろうか。link
人類の絶滅を望む反出生主義者たち:ノースカロライナで教師として働く48歳のライアンは、自分を産んだ両親に深い恨みを持つ。「人生は苦しみの経験だった。なぜ他の誰かに同じことをしたいと思うのか」。彼は反出生主義者、人間の生殖そのものに倫理的に反対するコミュニティの一員である。subredditには週3万7千人が訪れる。1千ドルの出産ボーナスを配る米政権や火星に送り込んでまで人類を存続させたいイーロンマスクなどは彼らの対極にある。一部の反出生主義者は全人類に生殖の停止を求めており、理想の帰結は、苦しみ続ける人類の終わり。出生率低下を非常事態と呼ぶ集団と『倫理的到達点』と呼ぶ集団は、同じ数字に違う世界を見る。合計特殊出生率が0.7にまで落ち込んだ韓国は、彼らにとって理想郷なのだろうか。 link
無意味な仕事を幸福に偽装するLinkedIn:カミュは1942年、「永遠に岩を押し上げるシーシュポスを、幸福な人間として想像せよ」と書いた。無意味を意識的に引き受けることこそ、神々への反抗であると。だがカミュは、シーシュポスにスマホとLinkedInのプレミアムアカウントを持たせる未来を想像できなかった。仕事SNS・Linkedinには、無意味なこと、薄っぺらいことを過剰装飾してそれっぽくした投稿が常態化している。ハン・ビョンチョルの自発的自己搾取、グレーバーのブルシット・ジョブど真ん中。不条理を認めるかわりに、それを達成としてブランド化しようとする人類。これは人類の適応なんだろうか。 link
📙本
服従(ミシェル・ウェルベック):フランス大統領がイスラム教徒になる世界はあり得るのだろうか。ちょうど自宅に届いたThe Economistの特集が”Islam in Europe”示唆的である。私が政治に興味を持てない理由が↓に詰まっている。 link
多くの男が政治と観争に関心を持つが、ほくはそういった娯楽をほとんど楽しまなかった。ぼくはトイレの手ぬぐい程度の政治意識しかなかったし、おそらくそれは残念なことなのだろう。確かに、若いときには、選挙はどうしようもなく興味を惹かなかった。「政治的な提案」は、どの政党を取り上げてえても、その凡庸なことに驚くばかりだった。中道左派の立候補者が、そのカリスマ性の度合いによって一期か二期選ばれ、摩訶不思議な理由で三期目は落選する。人々はその候補者、さらには中道左派自体に飽き、そうすると「民主主義的な政権交代」の現象が表面化し、有権者たちは中道右派の候補者を政権につけ、それもまた、彼の人格次第で一期か二期続いた。不思議なことに、西洋諸国は、対立するキャングが権力を分け合うに過ぎないこの選挙システムを非常に誇りにしていて、時には、その熱狂を共有しない国にそれを押し付けるために戦争を起こしたりもするのだった。 (p.46)
侍女の物語:次のポッドキャスト課題本。 link
📻観た/聴いた
UNCOVER 新章 未解決事件現地調査:闇を照らすのがジャーナリズム。さて、権威による誤った経済性判断が若者の人生を狂わせた例の一つなんだろうか。 link
🧩感じた/感じている
赤い羽根募金の使途不明金、7千万。政治家なら大問題になるのに、なんとなくふんわりしているのは責任を帰す場所を分散させているからだろう。責任対象は凝縮量で、逃がせれば勝ち、逃がせないと潰れる
大学は飛び級卒業だったのに、そろばん3級には落ちたし、小学校から大学院まで、学校のテストで1番になったこともない。人は環境の産物であり、かつ時間・タイミングで大きく変化する。知性の柔らかさについて、私たちは常に謙虚であるべき
お金はタイムワープの手段。循環的なことだけやるなら金融業はいらない。過去や未来に依存する人がいるから必要枠として存在する
これは真理なのだが、愚かな人類として、実践が難しい。>「道を間違えた後、一歩後退することは、正しい方向への一歩である」(カート・ヴォネガット)
現代の潔癖さは、”勘違い”と”甘え”に由来する
使途不明の劣等感はどうしようもない
🍵関心事
普段履きを下駄にしてみようかな。脚が鍛えられそう。
播磨屋はこれからどうなるのか。おかきはうまいんだよな。。 link
この冬の欧州で、燃料不足がどんな事態を引き起こすか。それは私たちの生活にどんな影響を及ぼすか。
🥑活動報告
先週、3時間半も得意の屁理屈をこね続ける時間があったのですが、結果けっこうな金額の商品券をもらえることになりました。みなさん、屁理屈は金になります。
電験三種の勉強を始めました。
シルバーウィークはテニス三昧。英気を養い、週後半からがつがつ仕事します。
お便りをお待ちしています。


