2025年5月4日
孤独と向き合う哲学:『山のパンセ』を読んだ👀
Cobe Associe は、戦略と技術の問いを現場で検証可能な仮説に変える。
若い人たちの情熱は、山で試練をうける。愛するものによって、こんなにも大きな試練をうけることを、実は一歩一歩汗をたらしながらも満足し、秘かに悦んでいるのである。 それがたとえどれほど低い山であっても、それはそれなりに、また高い山であればそれもそれなりに、苦しい一歩一歩が、めいめいの内部で彩られ、生命の力として蓄えられて行く。…
山への情熱は、解放の時が到るまではじっくりと構え、自分の一切を他の力や智慧をそこに集め、周到に慎重にその身を運ぶ。これが山での行為の尊さである。これが山で経験する人間の厚みであり深さである。
詩人、哲学者、随筆家でもある串田孫一氏の山に関する随筆集。山の魅力を派手に描くものでもなければ、難山への挑戦と克服を描くものでもない。山を歩く、山で暮らす中での小さな心の動きを丁寧な筆致で描く、まさに”pensée”(思想、考え、哲学)である。
わずかの誤問化しも許されない、しかも実に大きな自然という舞台に、私は、いやいや追い込まれるのではなくて、自分から出かけて行くこと、これが私の望む試煉だと言っては大袈裟すぎるでしょうか。
直ちに行為を伴わなければ意味を持たないような思考は、思えば山で、一つの困難にさしかかった時に、私が自分にまじめに要求するもので、そこでもしも妥協や、いい加減な態度を自分に許したならば、困難を前にして退くか、さもなければ自分をもっと大きな、 時には死の危険におとし入れることになるでしょう。
歌と死(p.61~)、山の夜風(p.153~)、意地の悪い山案内(p.186~)が特に心に残る。けっこう分厚い文庫ですが、これだけでも読んで欲しい。
暖かくなってきた。街は騒がしくなる。思索を深めるために静寂と孤独を求めるなら、山に足を向けてみるのもいいかもしれない。
💼心惹かれたもの
映画『Julie Keeps Quiet』:昨年公開されたベルギー映画で、テニスのジュニア選手とコーチの関係性が一つのテーマになっている。ちょうどNetflixでアルカラス特集を見たところだったので、光と闇というか、いっそうぐっとくるものがあった。若年層スポーツに少しでも関わった経験がある人こそ観るべき作品。日本で公開/配信してほしいな。リンク先は監督・主演女優へのインタビュー記事。 (link)
傷もの梅のレシピカード:雹害などでダメになってしまった梅が相当数出ているようで、そんな梅でもおいしく食べられるレシピを料理家の今井真実さんが自著から公開。なんて素敵な支援の形だろうか。 (link)
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
ポケモンが教えてくれる日本の暮らし:ポケモンに出てくるキャラクターの中には日本の神話や文化から影響を受けた要素がたくさんある。世界中のさまざまな文化や歴史、時事問題について書いているCailian Savegeがポケモンをテーマに日本文化についているエッセイが素晴らしかった。御朱印に代表される収集文化、昆虫を愛でる心、自立した子どもたちが街を歩く様子、猿回し等の動物共存…私の”当たり前”が相対化される読書体験。 (Medium, link)
情報機関/スパイチームのAI革命:2025年末までには、CIA等の組織で情報収集と分析の事実上あらゆる局面でAIが包括的に採用されると予想。人間が1分間に300単語を処理する間にClaude等高度なAIは75,000の単語を読み、分析することができる。活用しない手はない。 (reason, link)
豚肉タブー化の起源を辿る:約20億の人々にとって、豚肉を食べることが宗教上明確に禁じられているにもかかわらず、世界の食肉消費の1/3は豚肉である。青銅器時代/5千年前の都市国家では既に豚肉が食べられていたという。 (Archaeology Magazine, link)
古代南米文明は戦争よりも「トリップ・ビール」で関係を築いていた:学術誌Antiquityに掲載された研究。アンデス山脈で栄えたワリ文明は、周囲のコミュニティとの祭礼時、ビールのような飲み物に精神作用のある薬物(ビルカ種子/ブフォテニンを含む)を混ぜていたという。世界一緒に盛り上がれる祭りは多ければ多いほどいい。その意味で、対立が先鋭化している今こそスポーツの意義は大きい。 (New Atlas, link)
ワインラベルに書かれた動物で価格を推定する:面白い取り組み。Vivinoデータを使って分析しているのだが、日本酒の同種アプリを使って誰か卒論で書いてほしい。 (The Pudding, link)
女性は最初の一嗅ぎで仲良くなれるかどうかを判断する:コーネル大等の研究。初対面の女性2人は嗅覚を頼りに、数分以内に友達になれる可能性があるかどうかを判断できるとのこと。科学的には未検証だが、男性の嗅覚にここまでの繊細さはない。 (Cornell, link)
FIFAは2026年W杯ポスターを現地各都市のデザイナーと共作:どれも惹かれる。能力やセンスに加えて、都市文脈の理解が深い人がつくられているんだろうな。 (offball, link)
社会法則リスト142:お気に入りがたくさん、最高。 (Secretorum, link)
ダンスの法則:ネット上の議論に勝ったと主張しなければならないなら、おそらく大敗している
ブランドリーニの法則:でたらめ反論に必要なエネルギー量は、でたらめづくりに必要なエネルギー量より桁違いに大きい
マンローの法則:インターネットに書き込みをしたところで、誰かの意見が変わることはない。また、この法則を知ったとしても、書き込みをやめる人はいない
タイムキューブの法則:Webページの長くなればなるほど、その作者が狂人である可能性は指数関数的に高くなる
「問題」を人格の中心に据えてはいけない:”あなたにしか作れないものこそが、あなたを特別な存在にする。 そこに至るまでに何を経験したかではない” 可哀想な私、を人生の中心に据えてしまうとそこに幸福はない。 (Minor Genius, link)
📙本
両義の表現:尊敬する人が新入社員向け書籍の一冊にあげていた随筆集。芸術家のLee Ufanが考える制作やアート、ものと言葉、AI・知性、京都やエジプト、地域性、カラヤンやリチャード・セラ、指揮者のこと。素晴らしい本だった。どこかのニュースレター冒頭でまた書きます。 (Amazon, link)
十皿の料理:『調理場という戦場』を読んでそのプロフェッショナリズムに心を打たれた斉須政雄さんの書籍をもう一冊。10の料理とその調理法をテーマに、フランス修行の思い出や仕事との向き合い方を真摯に語っているエッセイ。シンプルなものこそ奥深い。魚と向き合うときにはまず面構えから。トリュフなど、本物と向き合うときにはこちらも相応の心構えで。 (Amazon, link)
📻観た/聴いた
Netflix『カルロス・アルカラス:マイウェイ』:19歳で全米オープンを制し世界1位に上り詰めたアルカラスに密着した現地ドキュメンタリー。テニスをしている人に限らず、何かにおいて向上しようと思う人は皆見てほしい。「テニスをやっているのは楽しいからだ」という思いと「プロとしての義務や責任に応えるべき」という思いを高い次元で両立することの難しさ。そしてそれを追求する人の魅力。 (link)
映画『SING SING』:米国シンシン刑務所で実際に行われている、受刑者たちが演じる舞台芸術。作中多くの登場人物を本人自身が演じている。知人に舞台演劇×ビジネスの領域を探求している人がいるのだけれど、彼女のモチベーションの一部を垣間見た気がする。全てはプロセスを信じることから始まる。英語の多様性を感じるにも良い作品。 (link)
映画『JOIKA』:ボリショイバレエ初の米国出身者となった実在のバレリーナ、ジョイカ・ウォーマックを主人公にした作品で、今年観た映画の中で最も強い印象が残るものだった。「頂点を目指す自分を嫌いになりたくない」「野心を持つ自分を嫌いになりたくない」まっすぐな叫びがそこにあって、緊張感がずっと続く2時間。実話に基づく映画に簡単な救いはなく、あるのは狂気のみである。画がとにかく美しい。あとで調べて知ったのだけど、準主役のオレグ・イヴァンコはウクライナ出身で、いまはロシア・タタルスタン共和国にある劇場でプリンシパルを務めている。いま、彼は何を思うのだろう。そしてジョイカご本人がバレエ解説でWIREDに登場していた。 (link)
NBP International Awards 2024:驚きは自然の中にある。 (link)
🧩感じた/感じている
スペインやフランスで起きた大停電関連ニュースをみるたび、日本の電力インフラの頑健性を感じる。
とあるスタートアップの売上架空計上が話題だが、業界/投資家/起業家全員が絡む構造上の問題であり、なくすことは不可能である。なくそうとすると新たな歪みを生む。
🍵関心事
スポーツ事業とどう向き合っていくか。毎日紙とペンで考えています。いまは生業としてコンサルタントをしているのですが、やっぱり商売がやりたい。
バックギャモンをはじめよう。なにから手を付けるか。
🥑活動報告
Gemini/ChatGPTに過去書いたものや性格分析資料なんかを読み込ませて”Cobe GPT”をつくりました。10時間くらい会話しているのですが、すごく私っぽい。。長くご一緒しているお客さんにさっそく共有したのですが好評です。今後、お仕事パートナーやクライアント限定で配布していく予定です。
経営や事業について考えたことをバラバラと書く試考錯誤シリーズを自社HPに掲載しはじめました。書くことは考えること。 link
2ヶ月半を予定していた世界一周、米国の不安定さもあり、1.5ヶ月で欧州からいったん帰国し、来年4月に再度欧州に行きます。アジア・欧州それぞれでスポーツ事業のキーマンに会うのでそれも楽しみ。

