2025年4月6日
金と虚構で前進する米国:『チャーリーとの旅』を読んだ👀
Cobe Associe は、戦略と技術の問いを現場で検証可能な仮説に変える。
年末年始に読んだニコラ・ブーヴィエ『世界の使い方』は強く印象に残っている本で、この3ヶ月で30名以上に直接勧めた。とあるレビュワーが「旅行記というにはあまりにもタフで生々しい」「著者が通り過ぎた時空を、ほんの少しだけ旅した気分になれる」と書いていた。その通りだと思う。失われてしまった世界がここにある。そして人間がいる。
ほぼ同時期、1960年に米国をめぐる車旅に出た作家のジョン・スタインベックがまとめた旅行記が『チャーリーとの旅 アメリカを探して』である。どちらも車での旅だが、あちらは20代の若者2人で2年の旅、こちらは還暦近い富裕層おじさん1人で3ヶ月。欧州の若者はすぐに壊れるボロボロのフィアットを20km/hで運転し、スタインベックは住居(冷蔵庫や4口コンロまである)付きの特注ピックアップトラックで高速を走っている。違いが際立つ各シーンがいちいち面白い。今も昔も、世界は広い。
「かくして、わたしは気がついたのだ、自分の国を知らない、と」。時は1960年、大統領選挙の直前、激動の10年の始まりの年。ロシナンテと名づけた改造トラックに乗り、チャーリーという名の老プードル一匹を相棒に全国をめぐる旅に出た作家は、どんなアメリカをみたのか。路上をいく旅の記録。 (書籍紹介より)
ニューヨークを出発して一路メーン州へ、その後ミシガン州に入ったスタインベックは多くのモービルホーム/トレーラーハウスをみることになる。車輪がついていて自動車で牽引できる住まいのことだ。1950年代後半から10フィートサイズが登場したようで、当時としては新しい住居コンセプトだったのだろう。スタインベックはモービルホームに暮らす4人家族と対話を通じて、血縁や地縁など"ルーツ"が米国人にとってどんな意味を持つかについて考えている。『WEIRD「現代人」の奇妙な心理』を読んだ今、米国人は特異的な奇妙さを持った社会集団なんだと感じる。
ひょっとしたら、アメリカ人って落ち着きのない人間たち、移動する(モービル)人間たちで、いざ選択するとなると、自分が今いるところに満足できないものたちなんじゃないのか?この大陸に住むようになった開拓者たちや移民たちは、ヨーロッパに落ち着くことのできなかった人たちだった。ルーツを大事にしているひとたちは故郷からは動かず、いまもそこにいる。しかし、おれたちはみんな、奴隷として無理矢理疲れてこられた黒人たちは別として、落ち着くことの出来なかった連中、故郷にじっとしていられなかった気まぐれな連中の子孫なんだよナ。 (pp.163-164)
更に面白いことに、訳者あとがきで明らかにされるのだけれど、本書内容の多くはフィクションである。本書刊行50周年を迎えた2010年に現地新聞記者がこの旅の実態を考証したところ、旅全体75日のうち45日は妻が同行した2人旅であり、数多く登場するキャンプシーンのほとんどは嘘でモーテル宿泊が主だったことがわかったという。これは作家としての習性か、それとも米国人の特徴的な振る舞いか。21世紀になっても嘘言いたい放題の大統領選がまかり通っていることをみると、米国人のルーツが垣間見える何かなのかも知れない。最近アメリカを旅した女性が書いたエッセイを読むと、やはりそうなんだと頷いた。
アメリカには、西欧諸国全体に蔓延しているテーマや傾向を浮き彫りにし、それを10倍にして見せる方法がある。 車、消費、便利さなど、私たちが築き上げた世界が、いかに積極的かつ意図的に私たちの日常生活から人々を流出させているかを、私はあらためてはっきりと見たのだ。 (“Keep coming back” by What do we do now that we’re here)
💼心惹かれたもの
マキタ ロボットクリーナー RC300D/RC200D:ルンバだエコバックスだを超えて、品質なら安心のマキタ。業務用感が溢れていて良い。 (link)
ギンビス たべっ子どうぶつラムネ:新年度で頭を使う仕事がたくさんあるので、午後はだいたいこの子にお世話になっています。スッキリした甘さでけっこう堅めのラムネ。おいしい。 (link)
Nintendo Switch 2:とにかく楽しみ。 (link)
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
2025年の希少性と豊かさ:この記事を読んで以来、S字カーブについて考え続けている。ゆっくり考えて味わう時間が欲しい。 (Alex Danco’s Newsletter, link)
The Luxury of Imperfection:完璧主義者であるからこそ、自分自身が完璧からほど遠いことを知っている。知識や行動を重んじるからこそ、自分に知識がないことや、なかなか行動できないことを肚の底から理解している。AIを使うことで自身の不出来が覆い隠されてしまう現代では、不完全さを堪能するのは贅沢な時間なのかもしれない。その意味で、私にとってテニスは最高に贅沢な時間を与えてくれるものだ。 (たよりない話, link)
酒好きのためのロンドン郊外ガイド:いってみたいな。>"ウェストミンスターにある Two Chairmenは伝統的に、財務省役人たちが予算の議論後に一杯やるために集まる場所" (The New Statesman, link)
LAで最もトレンディーな食料品店・エレホン:日本産イチゴ1粒が19ドル・約3千円、高酸素水が26ドル・約4千円で売られている流行のお店。話題性のあるセレブと提携してSNSを埋め尽くすことで、地元の富裕層だけでなく、インフルエンサーやVIPに憧れる若者たちを引きつけている。曰く、「シャネルを買うより安いから!」とのこと。 (Vogue Business, link)
日本人起業家が率いるエチオピアの急成長電動バイクメーカー:Uber JapanやLuupでの経験を経て2023年に佐々木裕馬さんが起業したDodaiは、1年で850台の電動バイクを販売。1回の充電で150キロ走れるため企業の配達用車需要を取り込み、かつ通常半年かかるナンバープレート取得プロセスを短縮化することで他社比1.5倍の単価を正当化している。創業手帳記事トーンがちょっとオラオラなのと、直近エチオピア・インベストメント・ホールディングスとの提携を解消するなど、個人的には注視銘柄。 (Rest of World, link)
移動はどこまで高速化すべきか?超音速飛行復活に潜むジレンマ:航空業界は地球温暖化の原因の約4%を占める一方、1年間に飛行機を利用するのは世界人口の約10%でしかない。超音速飛行の復活は気候変動を加速化させる可能性が高い一方で、それがもたらす実世界へのインパクトは限定的なのではとの問題提起。速さ・早さを求めるのが人間の性、理性論理では止められないのだろう。 (MIT Tech Review, link)
実在モデルのデジタルツインを貸し出すH&M:H&Mが芸能事務所やモデル自身と提携し、30種のデジタルレプリカ/デジタルツインを創り出す。その利用権はモデル自身に付与され、H&M以外の案件でも活用可能。H&M自身が認めるように、この取り組みがフォトグラファーやスタイリストなど関連職種にどのような影響を与えるかは誰にもわからない。 (Business of fashion, link)
なぜ私たちはガラス張りの高層ビルを建て続けるのか:高層ビルをガラス張りにしすぎるとエネルギー効率が下がるが富の象徴としてやおらガラス張りにしたがる傾向はNYから中東に至るまで広がり続けている。 (Dezeen, link)
LLMは幸運な時代に生まれた:いま広がっているLLMは概ね前向きで、友好的で、普遍的で、コスモポリタンである。もし40年前、あるいは40年後にLLMが初登場していたとしたら果たしてこのような姿になっていただろうか? (Marginal Revolution, link)
次世代の楽観主義に期待する:サイバー空間でわちゃわちゃするだけではだめだ。 (Network Notes, link)
📙本
離脱・発言・忠誠:企業・組織・国家における衰退への反応:「組織・事業の修理工になろう。しかし、それって何なんだ?」と悩みを深めている私にとって、求める情報・思考前提が全て揃っていました。経済論理としての離脱と政治論理としての発言、その調和の中に事業の最適解がある。何度も読み返すことになるだろう名著。 (Amazon, link)
世界の貧困に挑む──マイクロファイナンスの可能性:五常・アンド・カンパニー慎泰俊さんの新著。大学院で開発金融を学んでいた2012-14年に感じた、マイクロファイナンスに関する世間とアカデミアの認識ギャップがようやく言語化された。起業家もいれば安定を求める人もいる。そんな多様な社会にあって、当然低所得世界にも広く金融アクセスが担保されるべきだという強い思想。勇気と知力を頂きました。 (Amazon, link)
幕末外交と開国:熱海との新幹線往復移動で一気読み。江戸幕府もペリー艦隊もごりごりに政治をしている。おもしろい。 (Amazon, link)
📻観た/聴いた
教皇選挙:とにかく面白かった。ちょうど『権威と権力』についてポッドキャストで考えていたところだったので、権威のど真ん中・宗教組織における権力争いから感じるものが多かった。いまのところ今年一番。 (link)
中川家の寄席2025 「経営コンサルタント」:私がやっている仕事、これです。 (link)
🧩感じた/感じている
いよいよ春。先週末テニス・シングルス大会で優勝したのがとても嬉しいので、この春はとにかく体力・技術向上にいそしみたい。
先週から耳鼻科通院を再開して花粉症のお薬服用をはじめたら頭も鼻も目も全部すっきり。これまで払ってきたずいぶんな金額の社会保険料の恩恵を受けています。
いつか「どんだけ四角いねん!ワイオミングやないねんから!」のフレーズでつっこみたい。(検索推奨)
🍵関心事
今日月曜と週末金曜に6時間くらいの神戸⇔山梨のロングドライブをする。車内でどのオーディオブックを聴くか。松下幸之助「道をひらく」稲盛和夫「生き方」野中郁次郎「知識創造企業」の3つが候補。
🥑活動報告
今日から1週間、山梨・北杜で1人合宿です。3月末まではお客さんの事業のことで頭を埋め尽くしていたので、今後1週間でバランスを取りもどそうと思います。

