2025年3月30日
残滓の魅力:『村上春樹 雑文集』を読んだ👀
Cobe Associe は、戦略と技術の問いを現場で検証可能な仮説に変える。
小説・エッセイ両方書く作家さんの作品は、そのどちらかだけ好きになることが多い。森博嗣のエッセイは好きだが『すべてがFになる』など小説はいまいち楽しめないし、黒木亮の経済小説は大好物(『巨大投資銀行』『島のエアライン』が特におすすめ)なのにエッセイはどうも頭に入ってこない。エッセイから垣間見える私生活や思想に「ただ小説を楽しませてくれればいいのになぜそんな部分を開陳するのか」と憤ったり、安易なストーリー展開に「エッセイから垣間見える骨太な思想はどこに行った」と残念がったりしている。我ながら、理不尽だと思う。小説・エッセイ両方を楽しめる数少ない作家は柞刈湯葉くらいだ。
私にとっての村上春樹は、小説家というよりもエッセイストである。大学時代に読んだ『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』に始まり、『職業としての小説家』『走ることについて語るときに僕の語ること』『やがて哀しき外国語』など素晴らしい作品がたくさんある。新作長編が出たよ!と言われたら、ふらっと本屋を冷やかしにいくかもしれないけれど、新作エッセイが出たとなればろくにテーマも確かめずに予約をすると思う。衝動行動は口以上にものを言う。
『村上春樹 雑文集』には、人物論や小説論、音楽論などの各論から各種スピーチに至るまで、69の小編がごった煮になっている。時期もばらばら、当然まとまりもない。本人が前書きで述べているように、お正月の福袋のように楽しむのがいい本だ。最も心に残ったのは、地下鉄サリン事件を取材したノンフィクション『アンダーグラウンド』を出版した後に書かれた『血肉のある言葉を求めて (p.275~)』、知人家族の結婚式に向けて送ったメッセージ『いいときにはとてもいい (p.93~)』、15年の時を経ていま再度注目を集めるエルサレム賞受賞スピーチの文字起こし『壁と卵 (p94~)』、音楽雑誌連載の番外編として聞き書きされた『余白のある音楽は聞き飽きない (p.104~)』の4つ。「筆者の考え方を述べよ」を無価値化する、雑多さこそが魅力の、まさに雑文集である。本制作の絞りかすに栄養が詰まっている。
僕の精神はあれこれ雑多のものによって成り立っています。心というものは整合的なもの、系統的なもの、説明できる成分だけでできあがっているものではありません。僕はそのような、自分の精神の中にある細々した、往々にして統制のとれないものごとをかき集め、それらを注ぎ込んで、フィクション=物語を作り上げ、また補強しています。しかし同時にそれらを、このようにナマのかたちでアウトプットしていくことも、しばしば必要になります。フィクションという形だけでは拾いきれない細々とした事物も、少しずつ残滓として残っていくからです。 (前書き どこまでも雑多な心持ち)
先日「毎週大量の記事を読んでますね」とのコメントをもらった。実際、読んでいるもののほとんどは仕事に関連するもので(雑多過ぎて信じられないかもしれないが本当だ)、当然仕事ど真ん中のことをこのニュースレターで書くわけにもいかず、正直お届けしているものは私の思考の残滓である。しかし、村上春樹が差し出す物語そのものより私がその残滓を愛するように、統制のとれないものをかき集めたこのニュースレターを楽しんでもらえたら良いなと思っている。
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✏️読んだ/読んでいる
📃記事
ナミビアに女性大統領が登場:わずか14歳で与党SWAPOに入党したネトゥンボ・ナンディ=ンダイトワが、21日大統領に就任。アフリカで直接選挙によって大統領に上り詰めた5人の女性のうちの1人に。 (Semafor, link)
農地をゾウから守るには?ミツバチを飼おう:アフリカや東南アジアで、広がる農地がゾウの生息地と重なることが増えており、ゾウと農地の両方を守るために電気柵や監視塔など多くの手段が試みられてきた。Save the Elephantsの研究チームはケニアの民話参考にミツバチの巣を組み込んだ柵を活用しはじめたところ有意な結果が得られたとのこと。蜂蜜生産が副収入をもたらすこともあり現地NGOは有望な手段の一つとして拡大を狙っている。 (BBC, link)
スポーツで成功するためには才能だけではダメ:オハイオ州立大の研究。「スポーツはあらゆる背景を持つ子供たちが能力を最大限に発揮して成功するチャンスを与えてくれるんだ!」というのは神話で、人種や性別、家庭環境など社会経済的地位がものを言うことが示唆されている。結局、スポーツも富者のためのものなのだ。 (Ohio States University, link)
わたしたちは毎日2時間「盲目」になっている:人間の眼は周囲の鮮明な画像を収集するために毎秒3〜4回のサッカードと呼ばれる急速な跳躍運動を行っており、このサッカードの間、脳は動きのブレを防ぐために一時的に視覚を遮断している。1回あたりわずか50ミリ秒だがこの累積は1日2時間にもなるという。脳がこの空白の時間を「起こった可能性が最も高い推測」で埋めているため私たちは無自覚でやっていけている。おもしろい。人間の不思議。 (Kurzgesagt@Youtube, link)
炭水化物:調理→冷凍→再加熱で低GI化する:米やパスタ、じゃがいもなどを冒頭の流れを減るとデンプン構造が変わり難消化性でんぷん二編か、血糖値の急激な変動を防ぎ満腹感が長持ちすることに繋がる。「難消化性でんぷんからはまた、炎症を抑えて腸の健康を支える酪酸などの短鎖脂肪酸が作られます」と、米ワイオミング州の認定栄養士ヤツェク・シマノフスキ氏。冷凍できなくても、冷蔵庫で1日冷やしてから再加熱でもいいんだと。これはいいことを知ったな。 (National Geographic, link)
宇宙は膨張を止める、かも:Dark Energy Spectroscopic Instrument (DESI)に参加する科学者たちによる1,500万個の銀河から得られた3年間のデータを用いた新たな研究によると、宇宙の加速膨張の原動力と考えられている奇妙な力・ダークエネルギーは徐々に弱まりつつある可能性がある。ただし主任研究者によると「あと200億年は大丈夫!」とのこと。ひと安心。 (NPR, link)
Anthropicの主要プロジェクト運営法:競争が激しく成長著しい技術・市場である生成AIのような、複雑で依存関係が多く厳しいスケジュール制約のある環境。こんな時ほど優れたプロジェクトマネジメントが求められるはずだ。本記事に書かれた主要原則は遵守すべきものばかり。実践しよう。 (Nen Kuhn, link)
1日6時間以上の空き時間を作る:会議や連絡、情報整理に割く時間を最小化する
「勝利計画」を更新し続ける
高速なOODAループを回す:"頻繁に後退すること"を重んじる
過剰にコミュニケーションをとる:必要だと感じる量の10倍、繰り返し伝える
サブプロジェクトは思い切って切り離す
製品発表からみるに、Appleは朽ちつつある?:長いことAppleを見つめてきたジョン・グルーバーは、Apple Intelligenceの目玉機能であるはずのパーソナライズされたSiriがWWDCで実演されなかったことやデモさえ公開されていないことを強く批判している。↓に書くように、製品発表の4段階の内、Appleは最低レベルにも達していなかった。実証されていない機能を大々的に宣伝したAppleは信頼を失いつつあるのだと。ストリーミングで年間10億㌦以上の損失を出しているとされる同社。10年後はどうなるか。 (Daring Fireball, link)
レベル1:企業の製品担当者がメディアの前でデモを行うのみ
レベル2:招待参加者が、企業の監督・指導の下で、限られた時間、製品を試す
レベル3:開発者や愛好家が、制限・監督無しにβ版を利用できる
レベル4:一般ユーザーが製品を購入したり利用できたりする
美しくも奇妙なe-バイクの世界:環境にも優しく街並みも楽しめるe-バイクは理想的な存在ながら、自転車とオートバイをごちゃ混ぜにした存在であるが故に、まだ街に完全に溶け込んでいるとは言えない。東京や京都などでLuupが広がるにつれ反発が強まっていることをみてもわかるとおり(私も運転中何度かヒヤッとしたことがある)、マイクロモビリティの社会実装にはまだまだ時間がかかりそうだ。 (The Atlantic, link)
競争するな:社会にとっては参加者を競争させることはいいことだが、それがあなたにとってもいいことかどうかはわからない。現代文化では、直接的に意志決定や行動が強制されることはないし、 誰もあなたが望む以上に働かせることはできない。しかし、アルゴリズムやAIがあなたを間接的な強制に誘っている。 (inverted Passion, link)
📙本
小澤隆生 凡人の事業論 天才じゃない僕らが成功するためにやるべき驚くほどシンプルなこと:出版されてから時間の経っていない “個人の事業観”本を読むことは少ないんだけど、1週間で3人に勧められたので素直に読みました。「副音声:世の事業本の9割だよね」が聞こえてくる骨太で愚直な内容。結局、大事な現場のど真ん中で全力でやりきるだけですわ。 (Amazon, link)
これまでの経験を通じて、僕は事業立ち上げのステップを大まかに次のような順番で整理しています。
1 最低限達成すべきゴールを決めて、事業の「センターピン」を見極める
2 仮説を立て、テストを繰り返して、ゴールに最短で到達する「正解」を見つける
3 見つかった正解を、徹底的に「実行」する
簡単に言えば、 事業を成功させるには目指すべき正しいゴールを定めて、正しい優先順位をつけて、そこに向けて実行していく ということです。
傾いた世界 自選ドタバタ傑作集:『最後の喫煙者』に続く第2弾。冒頭の「関節話法」はユーモアたっぷり、標題作「傾いた世界」はフェミニズムこすりがすごい。「最悪の接触」を読んでいるときは宇宙人との意味不明なやりとりに私まで頭がおかしくなるかと思った。筒井康隆、どんな頭の構造してんねん。 (Amazon, link)
幕末外交と開国:とある老舗コンサルファームの代表からおすすめ頂きじっくり読書。ペリー来航前後、日本国内はどうなっていたのか、一方米国はどうなっていたかを丁寧に史実検証する。政治や交渉事は点ではなく線でみないといけない。「あたふたした無能な江戸幕府」のような刷り込みに抵抗しよう。 (Amazon, link)
📻観た/聴いた
XX:XX (link)
Not Fair on Spotify:運転時によく聞いている曲。テンションぶち上げていこう。 (link)
理想デスク by John Cafazza:10年後にここまで行きたいな。 (link)
🧩感じた/感じている
「他人と違う何かを語りたければ、他人と違った言葉で語れ」とフィッツジェラルドは言った。
当たり前のことを愚直に真剣にやり抜くこと。
失敗することよりも、真剣でないことを恐れるべき。
あなたの心の中の未解決のものすべてに対して、忍耐強くあるように。
🍵関心事
戦争犯罪に溢れるスーダン内戦の行方。
ミャンマー地震の二次被害がどこまで広がるか。災害は不安定な政治を更にゆらす。
4月末に初めてのゴルフコースデビュー。何を準備していくべきか。
年末・年度末の超繁忙期を乗り切ったことをどう祝うか。
🥑活動報告
今日1日お客さんの年度末締めに向き合う。報告書・請求書をたくさん出す締め作業と、明日以降の仕込みに時間を割く。会社をやるって大変だけど、楽しいっすね。
お便りをお待ちしています。

