2025年3月16日
『ダイアローグ・イン・ザ・ダーク/DID』を体験する▓
Cobe Associe は、戦略と技術の問いを現場で検証可能な仮説に変える。
新卒で入社した会社は外資系コンサルという割にウェットな組織で、仕事外のイベントごとがたくさんあった。忘年会は全社、担当業界、席近コミュニティごとに各1回ずつはあったし(そこに盛り上がったプロジェクトメンバー会や同期会なども加わる)、運動/文化系部活動や災害支援活動も盛んだった。「来月X-X日の週末で東北に行きます。参加される方は返信を」のような全社メールを頻繁に目にした。志ある方がとても多かったのだと思う。当時はそうは思えなかったが、深みのある、良い組織だった。
毎年ある社内イベントの一つが『ダイアローグ・イン・ザ・ダーク/Dialogue in the Dark』体験。外苑前にあったDID施設に、コンサルタントはもちろん秘書や人事の方などが誘い合わせて、確か20名ほどが参加されていたように思う。
照度ゼロの暗闇空間で、聴覚や触覚など視覚以外の感覚を使って日常生活のさまざまなシーンを体験するエンターテイメント。「DID」と略称されている。
参加者は数人のグループとなり、事前に白杖を渡され、完全に光を遮断した照度ゼロの暗闇空間を探検。視覚以外の感覚を研ぎ澄まし様々なシーンを体験する。暗闇内では「アテンド」と呼ばれる視覚障害者のスタッフが参加者を案内する。
業務外の案内メールが届く度にすぐにアーカイブしていた当時の私。目の前の仕事をこなすことで一杯いっぱいだったし、「何が楽しくて週末にまで会社の先輩に会わなくちゃならんのや」と歯牙にもかけなかった。イベント開催後に送られてくるレポートに付された参加者の皆さんの満足げな笑顔がまぶしい。当時から五感を磨くことに関心はあったのだけれど、結局未体験のまま神戸に移り住んでしまった。
その会社を離れて10年(15年2月に退職したのでぴったりちょうど10年だ)、先週の東京出張でやっとDIDデビューを実現した。竹芝にあるダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」で、初対面の方9名と一緒に真っ暗闇を旅をする2時間。鋭敏になった耳が声の主が誰かをはっきりと教えてくれるし、転がってきた鈴入りのボールを拾い掴むことも出来る。足裏が感じる点字ブロックの形は不断の10倍明確だ。人間の身体から発されるエネルギー以外がほぼ存在しない真っ暗。白杖ごしの触覚とみなさんの声のみを頼りに進み出した最初は不安で溢れていたのに、最後は移動しながら冗談を言い合えるまでになった。ダイムラー・ベンツとクライスラーの合併に際し、DID体験がトップ同士の融和に繋がったというのも頷ける。
体験しながら、あるいは体験し終わった後に考えていたのは、DIDはどこまで人間の悪意に対して頑健か、だった。今回は参加者皆が善意に溢れていたから良いのだけれど、もしここに少しでも悪意やエラーが混じったなら、プログラム全てが瓦解する。視覚がきかない状態、より大きな意味で言うと、各種エネルギーが使えない状態は、人狼型ゲームに対して極めて脆弱である。そしてもちろん、社会は善意のみで構成されるわけではない。エネルギーに溢れた社会・状態であれば嘘や悪意は簡単に駆逐できるのだけれど、エントロピーが増えるばかりの現代ではそうはいかない。更には、DIDはマイノリティに対するマイクロ・アグレッションに繋がっているとも指摘されている。物事は簡単にはいかんな、を痛感させてくれる。(この節は10回くらい書き直したのだけど、うまく書けた自信がない)
思えば、新卒会社のDIDツアーに参加されていた社員さんは人格的にすてきな方ばかりだった。母集団の人格分布を考えるとこれは驚くべきことである。そういう方は対話の価値と意義を心から信じていて、自然に対話の森へと誘われていくのだろう。話し合いよりも(相手を遮って)大声で叫ぶことが目先の利得に結びついているように見えるいま、闇に落ちていこうとしている人こそを対話の森へと誘うべきである。
思いついた相手がいるだろうか。その人を誘い、ぜひ竹芝に脚を伸ばして欲しい。
💼心惹かれたもの
のトニック:DIDの暗闇カフェで堪能。おいしかったので、売っているお店を渋谷で見つけ、会食をご一緒した方にプレゼント。見えない関係を紡ぐには贈りあいがベストである。 (link)
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
最悪で最後の受験:北京の小中学校でAI授業が始まる中、You Kosekiさんの最新作・ライトなディストピアを読む。最後の最後オチを含めて好き。本当に、自分が学生の時にたいしたAIがなくて本当に良かったと思う。1000年くらい経つと、紙とペンが安価に確保できて、識字率が高く、本がたくさんあって、同時にAIがそこまで発達していなかった20世紀後半の日本。知性を育む場として、最後のユートピアだったとなるのかもしれない。 (You Koseki, link)
憧れを集める中国の「おしゃれな叔母」:2023年の春節以降SNSで"fashionable aunts"のコンセプトが注目を浴びている。「かわいくて裕福でスタイリッシュな」叔母像が、未婚で子供もいないことを選択した新たなフェミニズム典型として台頭。2008年には造語・PANK(Professional Aunt, No Kids)が脚光を浴びて以来続くトレンドであり、ファッションブランドもマーケティングに活用。消費主義偏向や自立の過度な単純化などに批判もある。日本で感じたことはないのだけれど、知らないところで育っている文化の種なのだろうか。 (Jing Daily, link)
アフリカの自動車保有台数は2050年までに倍増の可能性:経済成長と中産階級の拡大に伴いアフリカ全土の自動車保有率は今後も上昇見込み。2050年におけるアフリカの平均自動車化率は、人口1,000人あたり73台→150台に倍増する可能性。自動車業にどっぷりの知人に共有。みんなでアフリカに行こう。 (Energy for Growth Hub, link)
パナマ運河・主要港湾の買収を通じて支配力を強める米国:ブラックロック率いる投資コンソーシアムが76%のプレミアムを支払い、23カ国・43の港を10億ドルで買収。世界で最も価値のある企業は本質的に"料金所"であり、トランプ政権との関係を強化しつつアナログの料金所を手に入れるこの取引はペイするだろうと著者。流れが集中する、統合するところが力を持つ、というのは普遍的な経済原理。 (Prof G Markets, link)
処方薬の名前はどのようにして決められているか:米国FDAは、他薬との混同が起きないか、意図しないネガティブな意味を持たないか等の観点で、製薬企業から申請された薬名を異なる言語や文化圏でのA/Bテストやその他の消費者調査方法によってチェックを行う。製薬会社は承認をとると同時に、上市後の製品差別化を狙い、理想的にはジェネリック医薬品と同義語にならないようブランドコンサル会社に協力を仰ぐ。 (Popular Science, link)
エンジニアリング・チームの集中術 “Less is More”:BCGと名著 “The Goal”から教わった最大の学びは、あえて減らすことで全体を大きくする技があるということ。そしてその技は存外有効なシーンが多い。各瞬間で小さなテーマ・タスクに取り組むことでフロー状態に入りやすくもなる。あえて制約を強くしよう。 (Github, link)
米国の若年女性の1/3がLGBTQを自認:ギャラップ社が2012年に調査をはじめて以来、LGBTQを自認する人の割合は上がり続けている。10年足らずの間に、LGBTQと自認する若年女性の割合は3倍以上に。増加の殆どはバイセクシュアル。バイセクシュアルを自認する人ほど過去1年でアイデンティティの揺らぎを経験している割合が高い、というのが面白い指摘だった。 (American Storyline, link)
自立・独立は個性を認める唯一の方法:詩人のクリストファー・モーリーは「成功とはただひとつ、自分の人生を自分のやり方で過ごせること」と言った。そのためには経済的に自立をすることだけではなく、道徳的、文化的、知的な依存を減らし、自立し、自由になることが必要である。チャーリー・マンガーの『成功のためのルール』も参考に、自分の知性と感覚と決断を信じよう。 (Collab fund, link)
ルール1:自分が買わないものを売るな
ルール2:尊敬する人のために働け
ルール3:楽しい人たちと組め
とにかく、あなたは書くべきだ:書くことを通じて、自身の考えの醜い部分や不快な部分、非現実的な部分を(誰かに指摘される前に)明らかにすることができる。頭の中だけでは達成できないレベルの文脈と一貫性をもって、物事が明確になっていくことを愛そう。人間脳の小さなワーキングメモリーを拡大し、実際に会って話すよりももっと聡明でいるための工夫が書くことなのだ。とにかく、あなたは書くべきだ。 (kupajo, link)
I write entirely to find out what I’m thinking, what I’m looking at, what I see and what it means. What I want and what I fear.
📙本
チャーリーとの旅 アメリカを探して:『怒りの葡萄』などで知られる大作家・スタインベックが「思えば自身は自国・米国のことを全然知らんやんけ」と思い立ち、60歳を前にして愛犬のプードル・チャーリーと一緒に全米一周車旅に出かける。時は1960年のニクソンvsJ.F.ケネディの大統領選直前。土地土地での会話や国境での出来事をまとめたこの旅行記からは、同時代、20代の若者が欧州から東へ東へと一方向に旅をした『世界の使い方』とはっきり異なる思考が伺えて面白い。どんな車を選ぶか、行き先をどう決めるか、街の人とどう語らうか、どこまで嘘を書くか、、、いつかのニュースレター冒頭でしっかりと感想を書きます。 (Amazon, link)
北斎漫画 第一巻「江戸百態」:先週会食をご一緒した方から頂き帰りの飛行機でじっくり堪能。遊び心を感じる。森薫さんの『SCRIBBLES』しかり、道を究めた人の落書き帳のぞき見はとても楽しい。 (Amazon, link)
📻観た/聴いた
こまつ座「フロイス-その死、書き残さず-」:紀伊國屋サザンシアターで鑑賞。今回はピンとこなかった。演劇鑑賞後にルイス・フロイスの生涯を調べ考え事をした時間は大変有意義だった。コンテンツ・メディアフィットと個人的関心すべてをバチッとはめるハードルはなかなか高い。 (link)
千原ジュニアの座王in武道館:関西ローカル・深夜放送の名企画が初のライブイベント。ロングコートダディ堂前とR藤本、くっきーとケンコバの面白さを全身で感じてきました。「座王は、舞台に立っていない時間で一番芸人をしてきた人間が勝つ」って煽りVTRを観て、あぁこれはコンサルタントでも一緒だなと思いました。私が思う良いコンサルタントは、お節介であり、意気・気障・野暮の感性を会議室以外でも実践している人である。 (link)
rebuild 403: Discrete Sushi (hak):ベンガルール行ってみたい。 (link)
🧩感じた/感じている
旅行記はこれからのAI時代に最も人気を博するカテゴリの一つになるだろう。
家賃と広告費の味がしない、居酒屋が片手間にやっているランチが好きだ。
事業づくりに必要なのは2割の論理と8割の気合い。両方必要で、混合比率を間違ってはいけない。
🍵今の関心事
いよいよ春。生活とお仕事それぞれで新たに始めること。
職人モードと管理職モード、どう切り替え上手になるか。 link
🥑活動報告
充実の東京出張でした。次の上京からは押上・浅草を活動拠点にしよう。



