2025年3月9日
炭素循環こそ自明の理:『エネルギーをめぐる旅』を読んだ👀
Cobe Associe は、戦略と技術の問いを現場で検証可能な仮説に変える。
電力会社と仕事をし始めて2年になる。鉄道や金融、ディベロッパーなど「私たちこそ社会のインフラ!」と喧伝するクライアントとご一緒したことは何度もあったのだけれど、ほんまもんのド・インフラ企業は今回が初めてである(もし私が電力会社の社員ならアンケート「あなたの業種は?」で迷うことなくインフラを選ぶ)。電車が動かずとも、銀行業業務が止まっても、社会は数日持ちこたえるだろうが、電気ではそうはいかない。インフラとはそういうものである。電力ひいてはインフラの視点で社会や他事業・企業をみるようになり、日常目にするものから日経のニュースまで、感じ方がずいぶんと変わった。人間活動も企業活動も、全てはエネルギーの生産であり、変換であり、循環である。エネルギーは宇宙と地球上を気持ち良くめぐっている。
本書『エネルギーをめぐる旅 文明の歴史と私たちの未来』を読むきっかけになったのはとあるクライアントの偉い方の発話だった。金曜に紹介され、翌火曜日には読み終えていた(オーディオブックだったので正確には"聴き終えていた")。第42回エネルギーフォーラム大賞受賞の素晴らしい内容・文体本であり、上に書いた問題意識にぴったりはまったこともあって、最高の読書体験になった。炭素が形を変えてめぐり続ける地球という星の宿命、火によって可能となった人類"消化機能の外だし"、電気エネルギー利用や人工肥料発明に至る人類史上5度のエネルギー革命、気候変動対策の文脈でCO2が悪役にされることへの違和感、「エントロピーこそ全て」と言い続けていたコンサル先輩の真意。ページを繰る度に発見とひらめきが溢れた。紹介してくださった方に、「時代の一瞬で、小国の一企業が儲かるか損するか。そんな小さな視点が考えていてはダメですよ、とおっしゃりたかったのでは?」と伝えたところ、にやっと笑われた。さすがは業界の重鎮。思考のスケールがコンサル小童とは違う。
"語源"ファンの私、エネルギーという言葉の源流にある"エネルゲイア"のこともぜひここで取り上げたい。この言葉は元々アリストテレスの哲学に由来し、「あるものが本来の目的や本質を発揮している状態」を意味していた。単なる物理的な力のみならず、人間の生き方や価値観と深く結びついた表現である。対比語を含めるとより理解が深まるかもしれない。
ダイナミス:まだ発揮されていない潜在能力・可能態
エネルゲイア:実際に発揮されている能力・現実態
私たちは個人・集団としてこのエネルゲイアを最大化できているだろうか。本書では、オリンピック選手級の才能があっても練習しなければただのダイナミスであり、試合で実力を発揮するところまでしてはじめてエネルゲイアになると例じている。エネルギーは産業を支えるインフラで担保するものでありつつ、同時にわたしたちが全力で発揮するものであるのだ。改めて、私たちの活動のすべてはエネルギーの生産であり、変換であり、循環である。授かった能力を全力で社会で示そう。エネルゲイアを体現しよう。エネルギー/エネルゲイア溢れる春にしたい。
💼心惹かれたもの
撥水ガラス:カーティン大学の研究者らが取り組んでいるテーマ。自動車のワイパーがなくなり、高層ビルの窓清掃は不要になるかもしれない。これもエネルギーの問題である。 (link)
こだわりのプレミアムレモンサワーの素セット:オフィスで「ききレモンサワー」をすることになり、高級ラインもつくらないとダウンタウン本家と一緒にならないな…と考え購入。至高のレモンサワー、海原雄山を唸らせる出来なんだろうか。飲み比べが楽しみ。ソーダストリームも手に入れたので強炭酸で。 (link)
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
先延ばし防止チェックリスト:10年以上前の記事、Tweetdeckを全SNSに、SkypeをZoom/Teams/hangoutに変換すればそのまま現代に活きる。認知能力が高まりきってしまった人類にとって、先延ばしは認知リソース確保の大事な選択肢なんですが、たまには真剣に取り組む瞬間もなくちゃ。全10個のうち気になった3つを。 (Less Wrong, link)
気が散るものを片付けた?:ドアを閉め、Tweetdeckを閉じ、FacebookとGmailのタブを閉じ、skypeを "邪魔しない "に設定すること
このタスクをやっている理由は明確?:メリットを感じるまで価値の源流を辿っておくこと
タスク完了時のご褒美は?:笑顔、腕を振り上げて勝利宣言、あるいはチョコ一粒でもよい。
コンサルタントがナイキブランドをメタメタに破壊するまで:ベインで23年コンサルタントを務めてきたジョン・ドナホーがCEOとして指揮を執ることになったのが2020年。以来データの過度な活用による組織リストラや小ぶりなマーケへの注力でブランド価値が大きく毀損された、と。テニス界でもナイキを着用するトップ選手がどんどん減っていて尖ったコンセプトを持つ新興ブランドに流れている。ブランド再建は茨の道。 (Linkedin, link)
ケヴィン・ケリーが描く『AI×人口減少社会の未来』:原題 "The Handoff to Bots"。世界的に出生率が低下し、産業革命後いままで急激に進んでいた人口増加を前提とした世界システム(を前提にした日本のサブシステム)はもう数十年で寿命を迎えるはず。AIは不条理な欲望・願望を持つ人間を相手にしてくれるだろうか?> 私たちはより少ない労働者、より少ない消費者・生活者、より少ない市場を前提にしながらも、より多くの選択肢、より良いもの、より革新的なものを求め続ける。これから年々、潜在的な顧客の数は減り、労働人口は毎年減少する。国の人口は半減し、小さな町からは人がいなくなるにもかかわらず、である。 (kk.org, link)
パッシブハウス高層ビルがブルックリンに建つ:パッシブハウスとは自然エネルギーを最大限に活用し、最小限のエネルギーで快適な室内環境を実現する住宅のこと。63階建て・高さ220m。583戸の住宅と、6フロア分のオフィススペースが入居予定。ホテル空間が出来るなら泊まってみたい。7月にドイツ・デュッセルドルフに行く予定がある。パッシブハウス建築を優先して探そう。 (Dezeen, link)
Starlinkを密輸入するボリビアの民:ボリビアのインターネット網は中国製の衛星を利用しており接続が常に不安定。しかし同国は中国開発銀行から15年の融資を受けていることもありStarlinkの利用を公式には禁止している。実際には1万台のStarlinkキットがあると推定される。それくらい、安定したネット網は市民に渇望されている。ネットはそもそも反抗と相性が良いのだ。 (Rest of World, link)
私たちは王族のような生活をしている:確かにどの国の政治はめちゃくちゃで物価も上がるばかりだけど、冷静に生活を見つめてみると、200年前の王族よりもよっぽど安全で豊かな生活を送ってはいないだろうか?トマス・ジェファーソンが米大統領に選出された1800年当時、4人に1人以上の子供が5歳を迎えることなく亡くなっていて、食料や水、エネルギーの確保は一大事だった。持っているものには無自覚になりがちなのが私たち。連載のタイトル "How the System Works"、どこまでも示唆的。 (The New Atlantis, link)
運を掴むためのコツは『何よりも全力でやること』:つい銀の弾丸を探してしまい、不運に見舞われると周りのせいにして自責から逃げてしまうのだけれど、まず「自身は全力をかけたのか?向き合ったのか?逃げなかったのか?」と振りかえるべきである。5 Types of Wealthで超ベストセラー作家になったSahil BloomはSNS上での小さな機会を全力で形にいって大成功を収めたが、この裏には何千回・何万回の空振りがあるはず。空振りし続けるために体力と気力の最大値をあげること。最も大事な訓練の一つである。 (Sahil Bloom, link)
ゴールの先にあるゴールを考える:「で、それが何になるの?」という質問を自他にまっすぐに向けること。収入が上がった?有名な企業に転職した?美人と付き合えた?で、それがなんだというのだろう。あなたはどこに向かっているのだろう。そのゴールはどこに向かっているのだろう。 (Behavioral Scientist, link)
📙本
BLUE GIANT MOMENTUM 第4巻:と言いつつも「何があろうと一番になるんだ」と猪突猛進する姿は人を惹きつけるものだと教えてくれるのがマンガ・ブルージャイアント。未だに映画版をみると玉田のシーンで泣いてしまう。第4巻は商社で働き始める前の玉田がDaiとYukinoriに会いにニューヨーク、ボストンを訪れるシーンが描かれている。いつか欧州編から読み返す。 (Amazon, link)
楠木建の頭の中 戦略と経営についての論考:私は会社ではなく事業を、それを扱う組織を考えるのが好き。多くの人は会社と事業組織をうまく分けて考えられていないようだ。そんなことがわかる小論考集。楠木先生の論理展開に触れる頻度が上がっていて、結果自身の仕事がうまくいく確率が高まった気がする。 (Amazon, link)
好きなようにしてください:楠木先生の、いろんな人への相談回答をまとめた本。タイトルそのまま。「あとは好きなようにするだけだな」まで考え抜けるか、が何より大事。 (Amazon, link)
📻観た/聴いた
yama “the meaning of life” TOUR 2024 at LINE CUBE SHIBUYA:ご本人登場の30分トークから昨年のライブ映像を100分を映画館で観る。良い音にぐっと集中できるのがとても心地よかった。大阪のT・ジョイ梅田、はじめていったのですが、気持ちの良い場所でした。音楽に没頭していたらなぜか良いアイディアがポンポン思いつきオフィスに直帰して夜半までお仕事。良い音楽体験は無意識を活性化させてくれる。 (link)
民藝のド反対を行くアート・The Uncomfortable:人間にとっての使い勝手ばかりが論点になるいま。本当にそれでいいんだっけ。くだらなさをふふふと笑い、その笑いの源流を辿って日常生活を見つめよう。 (link)
🧩感じた/感じている
結局、生姜とねぎと大葉を使えばおいしくなる。
人生の加速・減速を表現するときによくアクセル・ブレーキ(たまにギアの上げ下げ)が用いられるのだけれど、クラッチも使えるといっそうおしゃれになる。
あらゆるストーリーの基本構造:主人公は[X]をしたいが、[Y]が邪魔をする。
惨めな気持ちになりたくない。役に立たないと思いたくない。行き詰まりを感じたくない。無力感を感じたくない。失敗したと思いたくない。苦しい思いをしたくない。観客のように思いたくない。取り残されたと感じたくない。重荷に思いたくない。どうしたらよいだろう?
リルケの、新年に向けた言葉らしい。翻訳しても英語の文章でもいずれも美しい。4月から新年度を迎える人、あるいは人事異動の内示を受けた人たちに改めて贈りたい言葉。
… and now let us believe in a long year that is given to us, new, untouched, full of things that have never been, full of work that has never been done, full of tasks, claims, and demands; and let us see that we learn to take it without letting fall too much of what it has to bestow upon those who demand of it necessary, serious, and great things.
🍵今の関心事
明日武道館で体験する生・座王が楽しみ。トーク術磨きが今年のテーマ。
先週買った本、いつ読むか:サミング・アップ、コンスタンティノープルの陥落、小説 上杉鷹山、人体、なんでそうなった?、遺伝子‐親密なる人類史‐
今週末久しぶりにテニス・シングルス大会に出る。どこまでプッシュできるだろうか。
関税戦争の行方。マスクvsOpenAI裁判の行方。最高業績ながら株価低調なNVIDIA財務部門が今議論していること。
🥑活動報告
今週木曜まで東京出張です。今日はコンサル業界の大先輩、明後日は医療機器メーカーの知己と会う予定です。こういう商売をしていると、改めて、人とあってなんぼだなと痛感。昨日1日だけでもずいぶんと刺激があった。
先週は集中的にエキスパートインタビューをして、クライアントと一緒に認識を立体的にすることに全身全霊をかけました。疲れますが、価値に繋がるし、何より楽しいです。人の話を真剣に聴いて事業観を整えることについて、私は神仏から才能を賜ったようです。天職。このまま続けていきたいです。


