2025年2月2日
『旅のラゴス』を読んだ📚
Cobe Associe は、戦略と技術の問いを現場で検証可能な仮説に変える。
小説の読後感を言葉にするのは難しい。明確な主張を持つビジネス書であればその妥当性や有用性にコメントし、科学書やノンフィクションであれば素直な驚きを書けばよい。さて、小説である。自分の中にある反応はどこまでも私的・詩的なものであって、顕現した感想としての言葉にしっくりくることは殆どない。あの作品どうだった?と聞かれたとき、私が持つ表現語彙は「本当に良い作品だった」か「自分のためのものではないかも」のほぼ2つのみである。
先週、筒井康隆の『旅のラゴス』を読んだ。高度な文明が失われた異世界を舞台に主人公・ラゴスが旅をする長編小説である。テレポーテーションや未来予知といったSF要素を盛り込みつつ、淡々とした語り口で旅が進んでいく。牧畜集団にいる魅惑的な少女・デーデ(最後の最後までラゴスの旅を引っ張っていく)、被写体の理想を自画像として描き出すザムラ(私が一番グッときたキャラ)、飛行能力を持つ森番の娘・カカラニ(彼女を主人公に据えたスピンアウト作品が欲しい)。旅に取り憑かれたラゴスの日々は、魅力的な登場人物によって彩られている。しかし著者は、各登場人物を必要以上にしがんだりしない。次の旅に出るや過去の街や人物のほとんどは二度と登場せず、出会いも別れもほぼ決定的なものである。一方で、デーデとの出会いの場所になったシュミロッカ平原、王として共に子をなしたカカラニなど何名かは主人公の心身に大きなインパクトを残している。人生だ。
本書は長いこと、ラゴスの旅の理由が明らかにならないままストーリーが進行していく。王になったり市の長老会のメンバーに誘われたり、いくらでも安定した生活を送る機会が生まれるのに、ラゴスは次の街へと旅立っていく。読者はみな「もうそこでゆっくりしたらええのに」と思うことになる。『祖先が残した書物を探し出し未知の知識を追い求めること』をきっかけに始まったラゴスの旅は、自由への渇望と強い探究心、多くの出会いと別れを燃料として、終わることなく続いていく。15年の学びをまとめたノートが盗賊の手によって散逸しても、60歳を過ぎて幼なじみと恋愛のある生活を手に入れても、人里離れた極北の地へと足を向けるのだ。
ラゴスの旅は、人生のメタファーであるという。奴隷から王に至るまで多様な役割を経験し、一人称は徐々に「おれ」から「わたし」へと変わっていく。自らの希望とは関係なく労働にぶち込まれ(銀鉱での奴隷生活)、その後自己実現の時間が来る(ポロ盆地での15年に及ぶ学習期)がそこで旅は終わらず、経済的にも人間関係でも安定した故郷での生活を経験した後でも、最後は青年期に憧れた対象が待っているかもしれない地へと再度旅立つことになる(キテロ市から氷の国へ)。人は皆、人生に意味を求めるが、どこにも決定的な答えはなく、ただ旅を続けるしかない。それは悲観するものではなく、旅の中で出会った人や出来事は確実にその人を成長させてくれる。過程こそ人生。プロセスだけが人生なのだ。
『旅のラゴス』、読後感をきれいに言葉には出来ないのだけど、本当に良い作品だった。何人もの人が「年齢を重ねるごとに新たな感動を味わえる作品」と評するのも頷ける。35歳の私は、この作品で言うとまだ銀鉱での奴隷生活を終えてポロ盆地へと向かっている最中なのだろうと思う。人生の転機が訪れたときに読み返したい本が一冊増えた。私の旅も続く。
💼心惹かれたもの
loop earplugs:音楽が聴きたいというより雑音を遮る目的でイヤホンをしてしまうのですが、鼓膜含めた耳の健康にあまり良くないとのことで、仕事中は99%これを付けています。必要な音を遮らず、不快なノイズのみいい感じにやってくれるので感謝。 (link)
プライムパックスタッフ 絶品レンジでパスタ:似たようなものは百均にもあるんですが、湯切り不要でかつ普通に茹でるよりうまく出来るやつ。 (link)
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
23世紀の愚痴:AIがコンピュータの概念を過去のものにし、それそのものが新しいメディアになるとして、さて2世紀先の私たちは何に不平不満を述べているのだろうか。Collab Fundブログの最新記事『最低限のストレス』にもあるように、私たち人間はどんなに生活が充実しても些細な不満を論う生物である。AIの成長が、私たちの存在を相対化してくれているな。 (note, link)
なぜ多くの企業はAIから利益を得られないのか?:アールト大の研究。技術の良し悪しではなく、結局は従業員の感情に問題があるのだと指摘。↓マトリックス、AIに限らず、新しく登場した有用な技術・概念全般の組織導入を考える上で有用。いろんな強制力を発揮することが難しい時代なので、感情抜きに組織を考えてはいけない時代。結局私たちは幸福に向かっているのだろうか。 (Aalto, link)
2025年高級不動産業界の主役は「高給取りの独身女性」:2030年までに、女性は34兆ドル、つまり米国の投資可能資産の約38%を管理するようになる。そして世代間の富の移転は男性よりも女性を利することになるだろうとの予測があります。全米不動産協会の報告書によると、2024年における独身女性の持ち家所有者の割合が20%に上昇する一方、独身男性はわずか8%に留まっている。事業者はこの現実にうまく適応しているようです。 (Quartz, link)
ポール・クルーグマンがNYTを去るときに言ったこと:25年にわたり経済オピニオンを発信してきたクルーグマンがニューヨークタイムズにはもう書かないと宣言。「私が相手にしていた経営陣は、意見を持つことと、情報に基づいた事実に基づいた意見を持つことの違いを理解していなかった」愚鈍は罪ではないが、経営陣としては不適である。 (The Contrarian, link)
デヴィッド・リンチと喫煙:中学卒業後に飲酒と喫煙に嗜みはじめたリンチの創作活動のそばには常にタバコがあった。彼にとっての煉獄とは、タバコのない場所のこと。リンチはかつて、地球は "学びの世界 "であり、そこでは愛と苦しみはコインの裏表であるといった。いい追悼記事だった。 (GQ, link)
ウェルネス文化は今、過激主義を売り込んでいる:反ワクチン等の社会反動と過激なSNS露出文化と結びついたウェルネス文化は、もはやクリーンな食事やセルフケアにとどまらず、誤った情報の温床と化した。ほどよい食事と適切な睡眠があればいいだけなのに、クリック数を稼ぎ、権力を強化するための効率的な政治手段として使われるコンセプトになってしまったウェルネスは、まともな消費者からの信頼を回復できるのだろうか。 (Atmos, link)
Amazonはアルゼンチンで苦戦している:高い関税、複雑な輸入規制、ローカルEC・メルカドリブレとの強力な競争に苦戦。長年にわたって民間航空機利用者による密輸業者ネットワークもあるため、正攻法で攻略することが難しいマーケットになっている。アルゼンチンにおける電子機器の価格は米国比で90%も高く、結局は消費者がコストを負担させられている。 (Rest of World, link)
「混沌×カスタマイズ」が2025年のトレンド:私も意味わからんファッションを実践しようかな。タンス/ワードローブを開いて、古いお気に入りを掘り出して重ね着したり、新しい組み合わせを作ったり、ミシンの使い方を学んで裾のラインを微調整したり、ドレスを引き締めたりしてみては? (Vogue, link)
私たちは100年前の人間より賢いのか?:100年前の男が現代世界で目覚め生活をしなくてはいけなくなったとして、私たちが彼らの世界に適応するよりも早く、彼らが私たちの世界に適応できるんだろうか?と問いかける記事。確かに技術は上がり、ペーパーテストで計測される知能のベースラインは上がっているかもしれないが、普段使っている道具の修理の仕方を知らず、Google mapなしでは遠出も出来なくなってしまった私たちは、何かを失っているのかもしれない。 (Lindy's Newsletter, link)
静かで贅沢な日々を:資産残高や年収ではなく、深く考える機会がどれほどあるか、真の休息を取れているかどうかで贅沢さを測りたい。成功している起業家の多くは、1日3~4時間読書をしたり、完全に断捨離する「Think Week/思考週間」を取ったりしているとのこと。私もその生活を実現したい。 (The Saturday Solopreneur, link)
「ポットラック」をしよう:オフィスでやろう。 (Eater, link)
創造性とは間違いを犯すこと:私たちは間違わないと学べない。学ぶことが出来ないなら、創造的になりえない。正解を教えてもらうのではなく、より早くたくさん失敗するためにAIを使おう。副作用のないデジタルLSD、って踏み込んでいて好きな表現。 (Happicamp/Medium, link)
私は、GenAIが奇妙な連想や悪いつながりを生み出してくれることを望んでいる。言葉を入力することで、まったく予期しない、突拍子もないものを生み出し、有害な副作用のないデジタルLSDのように私の心を広げてくれることを望んでいる。 GenAIはもっとパンクで、もっとフィリップ・K・ディックであってほしい。
📙本
旅のラゴス:筒井康隆の名作長編。ポッドキャストパートナーのみきさんも大好きな作品とのこと。少し前にとりあげた『世界の使い方』含め、旅のことを考える機会が増えています。 (Amazon, link)
AIとSF 2 (ハヤカワ文庫JA):2つほど好きな短編がありました。 (Amazon, link)
マネージング・イン・ザ・グレー ビジネスの難問を解く5つの質問:先々週紹介した「決定的瞬間の思考法」の著者・バダラッコの著作。いつかRight vs Rightの決断に直面したらこの質問たちを思い出そう。訳が良ければもっと人気が出ていてもよいのに。 (Amazon, link)
純・純影響は何だろうか?/What are the net, net consequences?
自分の中核的な責務は何だろうか?/What are my core obligations?
ありのままの世界では何がうまくいくだろうか?/What will work in the world as it is?
我々は何者だろうか?/Who are we?
自分で納得できるのは何か?/What can I live with?
📻観た/聴いた
¥ØU$UK€ ¥UK1MAT$U | Boiler Room: Tokyo:コメント欄にある "he's the washing machine and we're the laundry"って言い回し、おしゃれ。 (link)
Sergio Duceの世界:スペインのアーティストで高校教師。想像力は無限大だ。 (link)
🧩感じた/感じている
スタンディングデスク×青竹踏みのおかげで、私の健康労働が加速している。
身銭を切る人生を過ごしていこう。タレブ『身銭を切れ』より。
語る者は実践するべきであり、実践する者だけが語るべき
身銭を切ればうわべは重要でなくなり、身銭を切らないとどんどんでたらめが膨らんでいく
勇気(リスク・テイク) は最高の善だ。世の中には起業家が必要なのだ。
昨年11月にキャンセル待ちに申し込んだ特典航空券がどうやら取れなさそうで悲しい。貯まりに貯まったマイル、何に使おうか・・
🍵今の関心事
せっかく年間契約したRiverside.fm、どう有効活用していくか。
スマートウォッチでうつ状態を検知する未来はいつ来るか?それはディストピアかもしれない。 (韓国・KAISTの研究)
🥑活動報告
金曜にたくさん請求書を出して、オフィスでたこ焼きパーティをしました。イワタニの炎たこ2とパロマのたこ焼き粉が最高。華金でした。
昨晩から明日火曜朝まで淡路島に籠もって一人合宿です。目先のプロジェクトワークと、少し長い目線でお仕事のことをじっくり考えます。


