2024年12月15日
舞台「太鼓たたいて笛ふいて」感想📚
Cobe Associe は、戦略と技術の問いを現場で検証可能な仮説に変える。
先週の日曜日、こまつ座の『太鼓たたいて笛ふいて』を観てきました。井上ひさしが生み出した金字塔的な戯曲で、昭和初期に活躍したベストセラー作家・林芙美子を大竹しのぶさんが演じる、約10年ぶりの再演作です。今年観た舞台の中でも屈指の印象深さで、心をぐっと掴まれる体験でした。
舞台は、1935年の日中戦争前夜から第二次世界大戦、そして戦後1951年に急逝するまでの16年間を通し、「放浪記」で華々しく文壇に躍り出た林芙美子の軌跡をたどります。新たな時代の空気に染まり始める昭和十年前後、彼女の描く物語は、世界を見据える眼差しや海外への憧憬とともに、多くの読者を惹きつけていく。しかし同時に、戦意高揚を求める世論や内閣情報部、陸軍部からの派遣先で体験する異境の地。その中で、芙美子は「太鼓たたいて笛ふいて」、巧みに時代を鼓舞する“物語”を書く者へと仕立てられていくのです。
この作品を観て強く感じたのは、「大きな物語(ナラティブ)の引力」です。戦争という巨大な歴史的潮流は、人々の承認欲求を満たし、金銭的利益をもたらし、ひとたびその磁場に惹き込まれれば、正否や真偽を曖昧にしたまま多くが吸い寄せられていく。「○○は大事」「○○すれば幸せになれる」といった、確証なき標語がそれらしく響くとき、人々は心地よい一体感に酔いしれます。けれど、ある日その大いなる物語が瓦解し、多くの人が手のひらを返して他者を責めはじめれば、その力は一気に反転する。本作の中で描かれた林芙美子は、こうした巨大なナラティブから逃げず、むしろ直面し、戦い続けた作家として映りました。
もう一つ強烈に胸に残ったのが、「ユーモアの力」です。わずか6人の登場人物で紡がれるこの舞台には、激動の時代の痛みが随所に刻まれています。その中で、芙美子の母・キク(高田聖子)は、どんな窮地でも侠気と微笑みを忘れない存在として描かれていました。戦地から帰ってきた時男(近藤公園)の、ユーモアで痛みをすくい上げようとする姿も実に印象的です。論理でも物語でもなく、ユーモアこそが生者同士を結びつける触媒になる。深い苦味を孕みつつも、人間性を取り戻すエネルギーとしての笑いが、観客の心に温かな余韻を残していました。
この作品から現実世界に何を持って帰るのか。私は今後も「大きな物語」とは適度な距離を保ち、仕事や日常を営んでいこうと思います。ビジネスの世界ではDXやGXといった“潮流の物語”が喧伝され、乗っかるだけでお金儲けは容易になるかもしれない。けれど私があくまで小さなチームで行動し、フェアで荒々しく、時に残酷なまでの「事実」に根ざして生きることを選ぶのは、個人的な美意識と信念があるからです。だからこそ、社のコーポレートカラーには中庸・自然の象徴である「緑」を選びました。赤や青に揺れることなく、このまま緑を突き通していくぞ。
そしてこの小さな営み同士を紡ぎ合わせ、生き抜くための術として、私はユーモアの種を撒き続けていきたい。巨大なナラティブに呑み込まれず、しかしまったく背を向けるのでもない、仕事の現場にある小さな物語と消えゆく瞬間をユーモアと笑いに昇華していくぞ。
💼心惹かれた
ポアールのサブレ:愛読している「全宅ツイ不動産チンパンジー情報」第140号で紹介されていてその美しさにずどーんと。お歳暮名目で仕入れてちょこっと食べたい・・・ 『想いの多い洋菓子店』ってすてきなタグライン。(link)
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
終議員:You Kosekiさんが今年発表したショートショートの中で一番好きな作品だった。政治ってもうその不条理を笑うしか使い道がない道具なのでは?全然話がちがうのだけれど、彼の「パワポ職人の人生」をモチーフに『Excel職人の日常』のプロットを考えているんだけども、人によってExcelとの関わり方が違いすぎてなかなかにしんどそうな気がしてきた。いつか書き上げて周りに小さく発表したい。 (You Koseki, link)
「信頼に基づくマーケティング」を取りもどす:「Non-Coercive marketing/非強制的マーケティング」のコンセプトを提唱した方が、もう一歩アイディアを進めていらっしゃる。見込み客も、自分自身も、"関係"の有機的性質と複雑性をすべて丸っと信じて、相手に行動を強制しようとする思考と距離をとろうと。自己紹介の "type of guy who is living the questions"がめちゃかっこいい。 (The Ungated Life, link)
再び高まる喫煙の魅力:喫煙率はここ80年下がり続けているが、煙草=かっこいいもの、という印象はここ数年強まっている。ファッション業界でも。酒と煙草は数千年の歴史に揉まれても生き残ってきた、ロバストなプロダクトですから。簡単には消えない文化遺産。CooleとDangerousは近い概念、というのはその通り。 (The Atlantic, link)
AIがデザインしたタトゥーに魂は宿るのか?:一昨年読んだ『身体を彫る、世界を印す――イレズミ・タトゥーの人類学』のことを考えた。いろんな宗教/民族的意味を背負ってきた存在で、かつAIの"作品"を身体に刻むことのインパクトは思いのほか大きい。 (WSJ, link)
高級チーズが闇市場の犯罪者に狙われる理由:チーズの国際価格は上昇しており、特にロシアなどで闇取引市場が発達している。2022年から硬い皮部分に米粒以下サイズのトラッキングチップ導入が進み始めているが、規格が統一されておらずなかなか偽造品が減らないとのこと。世界にはいろんな悪事がある。 (BBC, link)
Comic Sansはいかにして「フォント界のクロックス」になったのか:誕生から30年。レストランのメニュー表から葬儀の案内状、バチカンの公式文書に至るまであらゆるところで使われる身近フォントに。最初は嫌われていたものの、いまはちょっと愛されている。そんな意味でクロックスとComic Sansは似ている。 (Fast Company, link)
ビットコイン採掘熱を有効活用するチューリップ農家:2年前の記事。6台の採掘サーバーが生み出す熱を温室に回すことでガス代の節約に繋がっている。10万ドルもの高値になったいま、改めてこの農家を訪ねてみたいな。と思ったら、GPU盗難が怖くて場所は非公開らしい。そらそうか。 (Euronews, link)
失われた芸術としての「企業戦略」:論理の先にも戦略はあるが、勝利の現場には常に芸術がある。平坦な場所であれば教科書戦略が使えるのかもしれないが、企業の現場には急峻な山岳と細かな凹凸、深い谷があり、そんな地形にあっても一歩を踏み出さなくてはいけない。そこに必要なのは人間の索引力であり、芸術を希求する心。 (Roger Martin, link)
AppleのM&A戦略を振り返ろう:曰く「ブランドも、収益も、ユーザーベースも」目標にしない企業買収を行うApple社。おもしれぇ。 (SatPost by Trung Phan, link)
健康を目指すならBMIよりも心肺機能を測るべき:新しい系統的レビューとメタアナリシスによると、心肺機能はBMIよりも心血管疾患と死亡率の強力な予測因子とのこと。体重が減らなかろうと、HIITや無酸素運動をするのはいいのかも。 (U of Virginia, link)
具体的であること:毎日読むべき。「十分に具体的だ」という感覚を、記述可能な基準に変換することの重要さ。このサイト、事業の現場で合理性を考えるための全てが詰まっている。 (Less Wrong, link)
📙本
モンテ・クリスト伯(4/5巻):復讐が進み、少しずつ終わりが見えてきているけど、まだおもろい。無人島に持っていくならこの作品。 (Amazon, link)
堕落論/100分de名著「堕落論」:内容が冒頭「太鼓たたいて笛ふいて」とも通じて、人間だから堕落する⇔堕落するから人間だ、の間を行き来しています。武士道的精神や国威発揚といった戦時中に強調された高尚な理念や伝統的美意識などは、当時から既に実質を失った虚飾だった。さて、現代あるいは未来に目を向けたときに、虚飾といえるものは何だろう。実質を伴ったまま残るものは何だろう。 (Amazon, link)
インサイト中心の成長戦略:ツマミ読み。結局、インサイト/示唆ってなんなんだろう。 (Amazon, link)
📻観た/聴いた
いろはに千鳥 びしゃがけ選手権:素晴らしい企画なので、マネして自社オフィスで開催します。第1回は豚バラ、第2回でポテトサラダを予定。 (link)
抵抗のためのアート@グアンタナモ:9.11以降、対テロ政策文脈で注目を浴び続けてきたグアンタナモも、イスラエルやロシアへの注目が高まるにつけメディアに上がることも減り続けています。当地の軍事刑務所に15年近く罪状なしで拘留されていた作家、マンスール・アダイフィなどへのインタビューと作品をじっくり見つめました。 (link)
🧩感じた/感じている
大企業でとある新規事業が失敗すると、事業テーマがだめだったんだと整理されるが、殆どの場合、その事業責任者and/or担当者がイマイチなのが要因。
月3万円のChatGPT Proプランで使える"ChatGPT o1 pro mode"くん、この1週間で若手スタッフ3名×1ヶ月分くらい働いてくれている。マーケコンテンツ企画、初期論点・仮説の整理と構造化、来年の事業計画見直し、、、ありがたい。
朝の通勤で横断歩道信号無視してる人、もれなく憂鬱な顔してるんだけど、ならなんでその職場に早く着きたいのだろう。待って、ゆっくりいけばいいのに。
悩みの8割は「うだうだ言ってないでやれよ」で解決可能。残った2割も忘れたほうが良い。
正しいかどうかより、やってみる価値があるかないかで判断すべき。
>"常に正しさを目指すことがあなたの精神と勇気を鈍らせる。 それはまた、勝利が明確でないことには決して挑戦しないことにも繋がってしまう" (link)
🍵今の関心事
100歩下がって物事をみる習慣をどう身につけるか。五常・慎さんのすてきな表現から学んだ。
来年のトリガーリスト・バケットリスト。8割方完成、いまからもう一翻。
↓アイディアで書き始めたショートショート、どう作品に仕上げるか。
閉店セール(テーマ『世界が壊れる前日に』)
世界の終焉まで24時間を切った。駅前の中規模スーパー。客足は少ない。
もう食べ物を備蓄しても意味がないと知っているからだ。
それでも、パート勤務の店員たちは最後の棚卸しに追われる。
「賞味期限切れとかもう関係ないのに、律儀にチェックしちゃうわね」と笑い合いながら、いつも通りダンボールを開け、レジを打つ。
店長は店長で「最後だし、全部半額!」と掲げ、
誰も来ない売り場で自嘲気味にシュールなPOP看板を書く。
世界が壊れる前日にも、人は値札を貼るし、お惣菜コーナーでは良いコロッケが揚がる。
🥑活動報告
このニュースレター、有料購読(月5ドル/年50ドル)の方向けに金曜配信テキスト「こーべ信報」と音声配信「声談話」をやってみようと思います。信報では読んだもの先出しや業界・産業レポート、Cobe Associeの具体事業レポートや相談コーナーを予定しています。お便り箱こちら、相談やコメントをお待ちしています。
今週末は淡路島に小旅行予定。ここ2週間ずっと忙しいのでお湯に疲れを溶かしたい。なお今週もめちゃくちゃ忙しいので更に疲労が深まった状態でいくことになる。


