2024年11月24日
会話をしよう🎙️
Cobe Associe は、戦略と技術の問いを現場で検証可能な仮説に変える。
先日、人生で初めてマルチ商法の勧誘を受けた。一緒に飲んでいた知人が「最近楽しいことしかない!」とのことでおぉええやないのとなったのも束の間、「最近アムウェイをはじめて…」と言い出しておやおや?と真顔になる。「のぞみさんと一緒にやれるといいなと思っているんです!」の言葉で私の体中からアルコールが抜けていった。背もたれありのイスの店を選んでおいて良かった。
2つの意味で、お話にならない。1つめは慣用句そのままの意味だ。私のような人間をマルチ商法見込み客認定している時点で見る目がないので、その商売は辞めた方がいい。「詳しい話を聞く前からなぜ自分には不要だとわかるんですか?」のような空っぽの論理が私に通用すると思っているのだろうか。そもそもあなたが使おうとしているトークスクリプトは…など心の声は溢れているのだが、『あきれてものがいえない』ど真ん中の体験だった。
もう一つの意味は、文字通り、彼女との言葉のやりとりは会話ではなかった。お互いが日本語を話していて、お互いにその意味を理解しているはずなのに、第三者がみたらそれを「会話」とは見なさなかっただろう。私が発した問いや意見はすべて蒸発し、彼女はただ台本をおっていた。あの場に会話はあったのだろうか。
そもそも会話とは何か、を考えてみる。宗教哲学者のマルティン・ブーバーは、人間の関係性を「相手を対象化せず全人格的な出会いとして捉える"我-汝"」と、「相手を対象化・客体化する"我-それ"」という二つの根本的な様態で捉え、前者でのみ真の対話が可能となるとした。ドイツの哲学者、ハンス・ゲオルク・ガダマーによれば、会話は単なる情報交換ではなく、その本質には「互いの理解地平が融合していくプロセス」があるという。そこで必要となるのは開かれた態度であり、自らの先入観を相対化し、対話を通じてその先入観を検証・修正していくことが会話の一つの意義である。
いろんな場所から会話が失われたように思う。MC⇔ひな壇型のバラエティ番組は会話を装った"プレゼン+批評"集会、テキストSNSは感想と愚痴の掃きだめとなった。職場には何の活動にも繋がらない「ただの報告」が溢れ、家族内でも相手からより多くをテイクするための閉じた態度が推奨されている。自分以外の人を対象化・客体化するのが生きる術なのだろうか。
…のようなことを考えながら10分つらつら話した音声を生成AI・Claudeくんに渡して、出てきたものを手直ししてできたエッセイがこちらである。「不労所得で儲かる!」のみを売りにしたマルチ商法の話を聞くよりもよっぽど有意義な時間になった。相手がAIでもよい。わたしたちは会話を取りもどすべきである。
私は最近、奇妙な発見をした。オフィスで実際の「会話」がほとんど行われていないのだ。
一見すると、人々は絶え間なくコミュニケーションを取っている。Slackのメッセージは途切れることなく流れ、会議室は常に予約で埋まっている。しかし、そこで行われているのは本当の意味での会話だろうか?
私が「会話」と呼ぶのは、お互いの考えが行き来する双方向のやりとりのことだ。一方が何かを言い、もう一方がそれに応え、さらにその応答に対して新しい考えが返される。そのような会話が、今日のオフィスではめったに見られない。代わりに見られるものの一つが「報告」で、もう一つは「批評」だ。報告は上から下への一方通行の情報伝達で、批評は横からの一方的な意見表明に過ぎない。どちらも、真の会話とは程遠い。
私はつい先日、あるチームミーティングでこの問題を実感した。20人ほどが参加する会議で、誰もが順番に「報告」を行い、時々誰かが「批評」を加える。しかし、そこには対話が生まれる余地がない。アイデアは深まることなく、表面的な合意だけが積み重ねられていった。興味深いことに、多くの人がそれを問題だと認識していない。むしろ、これが「効率的な」コミュニケーションだと信じ込んでいるようにさえ見える。
これは深刻な問題だ。なぜなら、会話には集団・組織を結びつける特別な力があるからだ。古代ギリシャの哲学者たちが対話を重視したのは偶然ではない。ソクラテスの対話篇が今日まで読み継がれているのは、そこに人間の思考と関係性の本質が描かれているからだ。
私は最近、意識的に「続きのある質問」をするようにしている。例えば、誰かが意見を述べたとき、単に同意や反対を示すのではなく、「それは面白い視点ですね。では、そのアプローチを別の状況に適用するとどうなると思いますか?」というように問いかける。
驚くべきことに、多くの人は実はこのような会話を待ち望んでいるのだ。最初は戸惑いを見せても、すぐに活発な意見交換が始まる。一度、本当の会話の味を知ってしまえば、もう後戻りはできない。会話の復活は、単なるコミュニケーションの問題ではない。それは組織の知的生活の復活でもある。プラトンのアカデメイアで行われていた対話が、その後の西洋文明の発展を支えたように、今日の組織における真の会話も、私たちの未来を形作る力を持っているのだ。
良い会話は、必ずしも即座の結論や合意を必要としない。むしろ、一時的な不確実性や意見の相違を受け入れる余裕が必要だ。これは、効率性を重視する現代のビジネス文化とは相容れない面がある。
それでも、私は楽観的だ。なぜなら、会話の力は人間の本質に根ざしているからだ。私たちは本来、対話を通じて考え、学び、成長する存在なのだ。今必要なのは、その本来の姿を取り戻す勇気だけかもしれない。誰かが最初の一歩を踏み出さなければならない。私は自分がその一人になろうと決めた。あなたはどうだろうか?本当の会話を始める準備はできているだろうか?
💼心惹かれたもの
kyu camera:1回9秒・1日27回しか撮影できないVlog用カメラ。過度な編集やSNS共有を目指さない、いかにも京都発のプロダクト。 (link)
ムードマーク/伊勢丹のソーシャルギフト:相手の住所を聞くには憚られるけど何か贈り物をしたい、というシーンが相当あり、これまではLineギフトやGifteeを利用してきたのですが、もう少し素敵なものも贈りたいなと思い始めました。伊勢丹のバイヤーさん、信頼しています。 (link)
✏️読んだ/読んでいる
📃記事
言葉の責任問題:先週なんども読み返した短いエッセイ。本人の感情や認知の問題を、言葉の問題にすり替えないで欲しい。これから発言や投稿炎上が問題になる度に読み返したくなるやつだった。 (Yu Koseki, link)
「Tiktok上での見栄え」でキャリアを考える高校生:私の中学の同級生、制服のかわいさで高校を選んだりしていたから、まあそんなもんだよな。同時に企業はTiktokを採用プラットフォームとして活用している。場が生まれると予想外の使われ方をする。社会と道具の関係性だ。 (Teen Vogue, link)
移住を望むアフリカ人が過去最高に:ギャラップ社の2023年の調査によると、アフリカ人の3分の1以上がどこか別の国に住みたいと考えている。10年前と比べて全体的に増加しており(特にザンビアでは移住希望者が大きく増加)、これは世界的な傾向なんだと。世界全体だと、成人の7人に1人が他国への移住を希望している。 (Semafor, link)
雑居ビル:商業地区をつくるもっと優れたやり方:確かに、1つの小型ビルに大量の商業店舗が入る雑居ビルって東アジア特有なものに見える。米国や欧州だとオフィスビルor商業モールみたいな大型のものばかりだし。 (経済学101, link)
英国医師の5人に1人は臨床診療でChatGPTなど生成AIツールを使用:24年2月時点でのデータ。回答者1千名のうち544名が46歳以上だった調査において、約20%・205名が臨床現場で生成AIを活用し、そのうち29%が患者向け文章、28%が鑑別診断提案で利用していると報告。米国においても、NASA、財務省、National Gallary of Art、ロスアラモス国立研究所などの政府組織が公式にChatGPTを使い始めています。性能頭打ち?が懸念されている生成AI、どこまでいくか。 (BMJ, link)
「遺伝子差別時代」がやってくるかも:米保険会社が、遺伝子検査によってALSリスクが通常よりも高いことが判明した顧客の保険加入・適用を拒否。遺伝子差別禁止法の抜け穴の一つとして議論を呼んでいる。予測科学の進歩によって、差別と統計的予測の線引きの難易度がどんどん上がっている。 (The Atlantic, link)
樹木の3種に1種が絶滅の危機:国際自然保護連合(IUCN)が1千名以上の専門家の貢献の下おこなった発表によれば、16,000種以上の樹木種が絶滅の危機に瀕している。トチノキやイチョウ、数種のユーカリなども含まれています。とある研究では、毎年150億本以上の木が伐採され、人類の文明が始まって以来世界の木の数はほぼ半分に減少したとされています。IUCNは環境対策にあわせて種子バンクの必要性を訴えています。 (Phys.org, link)
KPI/"測ること"が道を誤らせるとき:英国の経済学者、チャールズ・グッドハートは「尺度が目標になったとき、それはもう良い尺度ではなくなる」という言葉を残した。指標に取りつかれた世界では、短期的な利益を得るためにシステムを操作し、長期的なビジョンを損なうことを危惧した上での発言だったとされる。さて、どの職場、どの国でも指標で目標が定められるようになった現代、わたしたちは正しい道を歩んでいるんだろうか。 (Hulry, link)
日常にある100の小さな喜び:先週のニュースレター冒頭で「ふとした瞬間に出会ったいい感じのものごと」を書いてから、他の人の似たような投稿を見るのにハマっています。特に米国で作業療法士として働く方のこちらがよかったです。 (Mind Body Dad, link)
静かな朝にマグカップで楽しむコーヒー、洗ったことのない新しいスウェットの肌触り、子どもが単語の発音を間違えた瞬間、かりたての草の香り、薪割り、ただただ深い深呼吸、サイクリング中に背中で受ける風、携帯電話を持っていないことに気づいたときの解放感、ミカンの皮が一気にくるっと剥けた、休暇一発目のビール、etc
📙本
モンテ・クリスト伯:今週末にはポッドキャストの収録があるのだけれど、全5巻のうちいま第2巻で進捗30%ほど。この進捗でも既に語り尽くせないほど推しポイントがある素晴らしい作品。復讐の熱量とお金パワーが掛け合わさったとき、誰にも止められない運動量が生まれる。 (Amazon, link)
ChatGPTを使い尽くす!深津式プロンプト読本:おかげさまで、未来の自分を助けてくれる生成AIの使い方を発明できました。ちょろちょろ触って実現していた小さな効率化から、3段階くらい深い活用法に到達できました。 (Amazon, link)
📻観た/聴いた
すてき切り絵:イギリス人アーティスト・Pippa Dyrlagaの作品がたいへんよかった。視覚の不思議さと、想像力の広がりを感じる。 (link)
イルカが観ている景色:米海軍が海底地雷を識別する研究の一環でバンドウイルカの背中にカメラを付けて6ヶ月撮影。イルカ同士で追いかけっこをしたり、毒を持つウミヘビを捕食したりと研究者を驚かせた。 (link)
🧩感じた/感じている
オフィスビル1Fの工事がもうすぐ終了しそうで嬉しい。はやく静けさが訪れてほしい。
「実行責任が先、説明責任が後」まったくその通りである。説明がつくことそのものは、その論理を優先して採用する理由にはならないはずだ。
お気に入りニュースレターの一つ、Dense Discovery vol.315で海洋生物学者・Ayana Elizabeth Johnsonが語っていたGround Rulesが素敵だった。特にお気に入り部分のざっくり翻訳を掲載。
どんなときも参加しつづけよう (“Keep showing up”)
人生はスポーツ観戦とは違います。私たちの未来を決めるのは、億万長者や政治家だけではなく、地域の中小企業のオーナーや学生、市民、自ら行動を起こす人、そしてあなたと一緒に参加する人もその一部です。休憩することはあっても、参加しつづけるように。私たちこそが未来を形作るのです。
🍵今の関心事
インターンチームが整備してくれた生成AI活用マニュアルをどう使っていこうか。↑Cobe Associe流コンサルマニュアルと合わせれば、相当の速度でジュニアスタッフが立ち上がるはず。いよいよ真剣に採用活動をしたい。
来年前半の仕事がほぼ決まってきたいま、既に決めていた国内外旅とどう折り合いを付けるか。
自社Webページに価格表や顧客の声を入れるべきかどうか。商店を名乗るなら価格表を出さなきゃ。
筋の良い編集者との出会い方。玉石混淆っぷりがコンサル並みの職種だと気づいた。
🥑活動報告
福井→金沢とおいしいものを食べる小旅行にきました。「都を北陸に移すべき」と感じる程度には大堪能です。今週末はオフィスで無印カレーの食べ比べ会。
来年3月に向けた新たなお仕事相談を2件頂き(2030年代/AI時代に向けた組織設計支援、海外・がん患者支援の先端動向調査)、年末年始もオフィスに籠もって仕事になりそう。飲食店経営領域の調査やモビリティ企業の新規事業支援も佳境。新しいチャレンジもしたい。仕事って楽しいな。
生成AI(Anthropic/Claude)と音声入力(WisprFlow)を組み合わせて思考整理用ボットをつくった。1時間みっちり会話したら現在の業務課題だったりスタッフ向けの活動マニュアルなんかがばちーっと整備できて大満足。よい時代に独立したなと実感しています。