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試考錯誤

試考錯誤:DeepResearch到来後もCobe Associeに依頼が来る理由

2025.05.07

「AIに仕事を奪われる」と言いながら、なぜか毎月ちゃんと依頼が来る。Cobe Associeという、小さな港町のようなコンサルファームにである。DeepResearchの登場で「もう人間の調査はいらない」と囁かれる時代に、どうしてまだ港に船はやってくるのか。

それは、「正確な答え」よりも「いい問い」の方が、圧倒的に手に入りにくいからだ。例えるなら、DeepResearchは完璧なナビを持ったタクシー。でも、乗客が「どこ行きたいかよくわからない」と言い出した瞬間、そのナビは無力化する。Cobeの仕事は「行き先の定義」から始まる。「温泉に行きたい」という人が、本当はただ静かに寝たいだけだと見抜く。この“読み”の力が問われている。

もちろん、DeepResearchは非常に優秀である。調べ物の速度も精度も、昔の自分に「何やってたんだ」と問いかけたくなるレベルだ。でも、情報はあくまで“素材”だ。素材をどう調理するか、どんな器に盛るか、どんな場面で出すかで、料理の価値はまるで変わる。わたしたちはこの“情報の盛り付けと味付け”に命をかける。スパイスは、顧客の業界知識と、時に皮肉である。

例えば、「このデータとこのデータが矛盾してるんですが…」と若手が戸惑う。それに対して「じゃあどっちを信じたいの?」と返すのがわたしたちの流儀だ。ここではファクトより、“意味のある仮説”が求められる。信じたい未来から逆算して、整合的なストーリーを構築する作業。機械にはちょっと無理である。ChatGPTは上司の顔色を見ない。

そして最大の違いは、“意味のある実行”につなげるかどうか、である。DeepResearchはすばらしい調査報告書をくれるが、それで意思決定するのは人間。人間は案外、情報よりも“背中を押してくれる空気”に動かされる。わたしたちは、その“空気づくり”が得意だ。つまり、会議室で「それっぽく聞こえる仮説」を使って、上司に「なるほど…」と言わせる空気。これがあるから、会議が前に進む。まず会議を前に進める。そして安心して実行に移り、日々学び、良い問いと答えをどんどんつくる

結局わたしたちにお声がかかるのは「DeepResearchが来ても人間の判断は迷子のまま」だからである。情報の洪水のなか、沈まないように問いの浮き輪を作ってくれる相手。資料の裏側に「本当はこういうことを言いたいんですよね」と書いてくれる相棒。あるいは、問いと問いの間にある“沈黙”を一緒に見つめてくれる人たち。

情報の民主化が進むほどに、戦略は格差になる。検索で差がつかない時代に、問いの質と実装の筋が、意思決定の決定打になる。そしてそれは、相変わらず「人と人の間」で磨かれる。

だから依頼は、なくならない。むしろ、ちょっと増えている気さえする。

企業概要

Cobe Associeはリサーチ+事業支援コンサルティングを行う会社です。新規事業関連の取り組みやCVC・社内起業支援事務局の支援、スタートアップの戦略検討などを行っています。2018年の創業以来60社を超える企業とプロジェクトをご一緒してきました。

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