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ニュースレター】よっしゃ、たくさん負けるか。

2026.02.09

毎週月曜朝にsubstackで配信しているニュースレター『こーべ通信』の最新号を配信しました。


昨月22日に将棋の加藤一二三先生が逝去された。神武以来の天才と呼ばれ、名人を含むタイトルを8期獲得し通算勝利数は歴代4位。しかし、先生が持つ記録のなかで、他の人が及ばないのは”最多敗”記録である。プロとして通算1,180敗。60年に及ぶ現役生活、毎年20敗近くしていたことになる。たくさん負けを重ねることの何がそんなにすごいのか。ただ弱いだけではなかったのか。

将棋は興行である。ファンは強い棋士同士の対局に集まり、盛り上がり道中のふるい落とし過程はひっそりと行われ、敗者は静かに去っていく。多くの棋戦では、予選初期で負けたらその年はもう終わりである。ベテラン棋士になると、年間対局数が15局程度の人も出てくる。つまり出来ても年15敗までだ。年度対局数記録で最多89局を指した2000年の羽生善治先生は同年、21敗している。たくさん負ける機会をもらうためには、まずたくさん勝たなくてはいけないのがプロの世界。負けは積み上げた勝利の証明でもあるのだ。

そして加藤先生が特徴的なのは、その圧倒的な現役期間である。14歳で中学生プロ棋士となり、77歳で引退。多くの棋士が60歳前後で引退を決める中、全棋戦にルール上出られなくなるまで指し続けたその胆力。将棋は運のないゲームである。負けることの責任を誰かやどこかに押しつけることは出来ない。負けたのはすべて自分のため。その事実を60年以上引受続け、向上し続けたからこその1,180敗である。たくさん負けられる人は、自分を諦めない人である。自分を諦めない人の強さには粘りがある。14歳でプロ棋士となった天才・加藤先生が初めて名人位を獲得したのは、42歳のことである。

ミハイル・ククシュキンというテニス選手がいる。1987年・ソ連生まれ。2012年に世界のトップ50に入り、自己最高位は2019年の39位である。生涯獲得賞金は750万ドル超。厳しい経済環境のために国籍まで変えた(露→カザフスタン)彼にとって、十分すぎる成績と金銭リターンだと思う。しかし彼はまだ現役バリバリで試合に出続けている。世界ランキングは250位を下回り、主戦場はグランドスラムとはずいぶん距離のある、若手ばかりのチャレンジャー・下部大会を中心にである。ツアーレベルの勝敗は175勝239敗。彼と同い年で先週全豪決勝まで行ったノヴァク・ジョコビッチは1,163勝233敗。ジョコビッチはまさに生きる伝説なのだけど、私はククシュキンこそがその言葉に値すると思う。負けても勝負の場に戻り続けること。勝ちより負けが目立つようになっても簡単に「引き際」を語らないこと。大人になるにつれ、その偉大さが心に染みるようになってくる。

今日も仕事を続けよう。負けに怯まず、責任を引き受け、場に戻ろう。負けから学び、ひたむきに前進し、若手の挑戦を受け続けよう。加藤先生にとっての藤井先生、ジョコビッチにとってのアルカラス。いつか新たな才能が直接引導を渡しにくるその日まで、現役として立ち続けよう。

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