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試考錯誤

試考錯誤:努力賞をほしがるコンサルタントの無意味さ

2025.08.06

コンサルティング業界ではアウトプットが全てであると教わってきた。プロジェクト型の仕事をしている職種ならみなそうだと思う。経営コンサルタントという仕事において、努力とは手段でしかない。成果にしてこそプロの仕事である。

「この案件、けっこう頑張ったんですけどね……」そう呟くコンサルタントがお客さん先の別プロジェクトにいると聞いてびっくりしてしまった。膨大なスライド。無数のバックアップ資料。徹夜で詰めた分析。自分なりにはよくやったという手応え。──だが、それが何かを動かしたか? クライアントの意思決定を1ミリでも変えたか?なぜ努力賞をほしがるのだろう。

「発注されているのだから私たち/コンサルは価値を出している」というロジックの欺瞞である。がんばったアピールに情けをかけた顧客が発注をくれることはあるだろう。しかしそれは価値を出したからではない。顧客の人情の搾取である。

コンサルタントの仕事は本質的に成果が曖昧である。成果物が一般公開されることもないし、下手したらその企業の中の数名しか関与しないこともあるだろう。プロジェクト後に残るのが資料と会議議事録だけ。曖昧さが残る中で、「頑張った感で顧客の主観的成果を上積みしたい」という誘惑に駆られたコンサルタントは参考資料を積み上げ、経営陣との会議回数を増やし、現場に無駄なヒアリングを依頼し続ける。──それが、何だというのだろう。

顧客は、努力を買っているのではない。質の高い意思決定、その先に見える成果の予兆を買っているのだ。動く選択肢を、納得感とともに提示するプロセスを。そこに頑張った感を挟み込む余地など本来ないはずなのだ。

そして厄介なのは、周囲もその努力を賞賛してしまうことだ。「若手なのに頑張ってるね」「よくここまで詰めたね」「大変だったでしょう」やさしいコンサルなんて言葉が一目に触れるところに出てくるのはその象徴である。私からすると、それは優しさではなく、思考停止の共犯だ。

努力賞が乱発される組織は、結果で語れないことの隠蔽装置を、文化として内包している。本当に優れたコンサルタントは、努力を語らない。語るまでもなく、自社や顧客企業を動かしている。稼働時間も、スライドの枚数も関係ない。ただ、結果の重みだけがある。

努力賞を心から忌避し、軽蔑すべきである。私たちがプロとして求めるべきは、動きをつくるという結果へのこだわりだけである。

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