News

ニュースレター

ニュースレター】より良い”不完全さ”を目指して:アシモフ『The Relativity of Wrong』

2025.09.01

毎週月曜朝にsubstackで配信しているニュースレター『こーべ通信』の最新号を配信しました。


より良い”不完全さ”を目指して:アシモフ『The Relativity of Wrong』
https://cobe.substack.com/p/244

調査分析結果をテーマにお客さんと激論したとある日の午後。ロボット三原則等で有名な科学者・作家のアイザック・アシモフが書いたエッセイ”The Relativity of Wrong(間違いの相対性)”を読んだ。『完全に正しくないものはすべて間違っている』と考えること、正しさ・誤りを絶対的なものとみなす考えにはてなを投げる。正解も誤りも、それを支える理論や文脈も、すべては相対的なものではないだろうかと。

2+2=?の答えとして、”紫”も”17”も誤りだということは明確だ。しかしその誤りの程度は同じだろうか。逆に、正しい答えである”整数”や”偶数”、さらには”4”について、その正しさの程度は同じだろうか。

どちらの問いにも「同じだけど…」とお答えの方に向けもう一歩。9+5=?に対して”2!!”と答えたとき、あなたはどう判定するだろう。小学生2年生の算数テストであればバツだ。しかし『9時から5時間経過すると2時になる』は真実であり、+や=について厳密な定義を持たない人であれば、9+5=2が部分的に正しい(正しくなる文脈が存在する)ことを認めてくれると思う。

“地球は球体だ!”という主張は、”地球は平面だ!”よりも一般的に正しい。しかし科学的な厳密性を突き詰めるなら、地球は完全な球体ではなく扁平回転楕円体に近く、さらに赤道周囲の隆起具合は南側が北側よりもわずかに大きいため、正確な表現としては”洋梨型(ジオイド)”である(南極点と比べ、北極点は地球の中心から40-50mほど遠い)。さて、”地球は洋なし形!”はどの程度正しいだろうか。地球は丸い、と言う人に向けて「あなたは間違ってますよ」と伝える人は真実の伝道者だろうか。

正誤にも、なんなら善悪にも、相対性がある。そして正しさを高めたものが常に適切であるとも限らない。この相対性・適切性に無自覚な人(頭でっかち and/or 無教養)はみなさんの周りにもいると思う。特定の勉強をしすぎた人は唯一解を過剰に求めかつ喧伝し、勉強不足の人は正しさ・誤り・適切さを測る尺度を持たない。「正しくもあり、間違ってもいるという状態が存在する」「正しさ、適切さを高める漸進的・反復的な行動は”常に”必要である」は当たり前の前提なのだけど、みなでこれを共有するのはたいそう難しい。

調べ抜き、考え抜いた先にある正しい戦略、施策、行動、資料が存在するとする。しかしそれよりも正しく、適切なものが常に存在するのだ。その意図に従って改善した戦略、施策、行動、資料があるとする。しかしその先にもより正しく、適切なものが更に存在しているのだ。

終わりはない。あなたがつくる戦略、施策、行動、資料は常に不完全なものである。あなたが従っているものについても同様だ。しかし、それはそういうものなのであって、誰かを責めたりせっついたりすれば解消されるというものではない。不完全さは前提であると受け入れつつ、より良い不完全さを求めるために前進すべきである。アシモフはその先頭を走る科学者の一人だったのだと思う。


経営・事業運営に参考になる情報もお届けしています。ぜひ購読してください。

企業概要

Cobe Associeはリサーチ+事業支援コンサルティングを行う会社です。新規事業関連の取り組みやCVC・社内起業支援事務局の支援、スタートアップの戦略検討などを行っています。2018年の創業以来60社を超える企業とプロジェクトをご一緒してきました。

ご紹介資料はこちらです。

大手・外資ファームでは実現できない柔軟さで、質の高いプロジェクト運営をお約束します。お問い合わせフォームや各種SNSなどを通じて、ぜひお気軽にご相談ください。

最新のお知らせ/リリースはこちらです。

この記事をシェアする
FacebookTwitter