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試考錯誤

試考錯誤:わたしは「出汁」を売っている

2025.08.20

数ある零細コンサルチームの中で、社内シンクタンクの立ち上げを売り物にしているところは内くらいではないだろうか。このテーマで顧客支援を続けてもう3年になる。いくつかの会社とこのテーマでプロジェクトを行う中で、必ず顧客と議論するテーマでがある。

「結局、社内シンクたる我々は、誰を相手にどんな商売にするのか」

興味深いことに、「何の商売をしているのか」という議論にクライアントも大いに盛り上がる。特に有形物を扱う企業では、この問いに向き合う機会は少ない。「そこにある物を売っているだけ」という思考停止に陥りがちだ。だが、これは「スターバックスは何を売っているのか」「マクドナルドの本質的価値は何か」という議論と同じだ。一度俯瞰して見直すことで、新しいアイデアが生まれる(こともある)

社内シンクタンクとはいえ、仕事の組織である以上、その成果を誰かに買ってもらわなくてはいけない。社外の顧客であれ、社内の同僚であれ、誰かに価値を認めてもらってこそ成立するチームである。様々顧客の組織や事業戦略上の成約や目標がある中で、何を買ってもらうべきであり、それは果たして私たちはつくりうるのか。情報、議論、提案、紙束、、、、売り物を定義する議論が2-3回で終わることはない。

先の問いは鏡のように、私自身の商売にも跳ね返ってくる。Cobe Associeは、結局何を売っているのか。今のところの回答は『考える人・組織を作るための出汁』である。

この”出汁”という表現は、CDI/コーポレートディレクションの方々が語った比喩である。人の出入りが激しいファームで、何が「らしさ」を作るのか。一人ひとりが具材として、それぞれの味を出汁に染み出させる。昔と今では微妙に違うが、混ざり合い、染み出したその店独特の味を創り出す。

CDIという空間は、「おでん屋の出汁」「漬物の糠床」のような存在に過ぎません。各コンサルタントはよい出汁や糠の中で成長し味わいを増し、同時に出汁や糠に逆に深みを与えることで次代に引き継いでいきます。コンサルティングの世界での「職人にとってのより良き工房であること」を旨として運営されているのです。 link

Cobe Associeはほぼ個人企業で、組織の中で出汁を生み出しているわけではない。だが私の頭と身体には染みこませてきたいろんな社会の出汁成分が宿っている。考えたこと、やってきたこと、蓄積された情報と思考——それらが渾然一体となった複雑な出汁。これを顧客にお裾分けすることが当社が生み出す価値の根っこにあり、それが最も機能するのが『社内シンクタンク』プロジェクトである。

コンサルやスタートアップ、なんなら将棋やテニスに至るまで、複数ジャンルの旨味がつまった出汁をクライアントのところに持っていくと、彼らの出汁と混ざり合って、それが一段上手くなる。味の素のようにその味に染まるのではない。一滴加えると、味が一段二段上がる。そうなっている/感じて頂いているからこそ、長いことプロジェクトが続いているのだとおもう。

コンサル業界に向けられる様々な皮肉がある。「経営層・意志決定者に媚びを売る虚業」「スライド・スプシの高級文房具」「いつでもクビに出来る高級派遣」——どれも一面の真実を含んでいる。私が売っているものもある側面ではそう見なすことができるはずだ。しかし私は、パワーポイントの納品やワークショップの実施といった”形式”を超えて、この「出汁」という価値で商売ができるようになりたいと思う。そのためには、出汁の価値をより高め、さらに多くの人に出汁の旨味を体感してもらわなくてはいけない。

一緒に社内シンクタンクをつくって行っているクライアント側のスタッフが、いろんなところに出張っていって価値を出すとき、薄らと私の出汁が相手にも届いていくことになる。この出汁の伝播こそ、私が思うコンサルタントの価値である。

企業概要

Cobe Associeはリサーチ+事業支援コンサルティングを行う会社です。新規事業関連の取り組みやCVC・社内起業支援事務局の支援、スタートアップの戦略検討などを行っています。2018年の創業以来60社を超える企業とプロジェクトをご一緒してきました。

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