試考錯誤:”因果一如”を真とするならば
「因果一如(いんがいちにょ)」という仏教用語がある。原因と結果は本来ひとつのものであり、分けて認識できるようなものではない。因があれば果がある、という因果関係を超えて、むしろ因が生まれるときには果も同時に生じている。逆に言えば、果が現れて初めて、因としての意味が立ち上がる──そんな世界観だ。
禅の言葉に「因果一如」という言葉があります。
「因果」とは原因と結果という意味で、「一如」とは絶対的に同一である真実の姿という意味になります。
すなわち、原因と結果は一緒に生まれるという意味で、過去=「因」、未来=「果」にとらわれることなく、因=果である「今」を大切にするという意味が込められています。例えば「努力」を例にしてみると、努力の結果として、成功か失敗(因果応報の捉え方)と捉えてしまいがちですが、努力の結果は成長です。努力している”その時”には、すでに成長していると考えが因果一如の捉え方です。
- 頑張ったから努力したから結果がでるはずだ、と努力した結果(見返り)を期待しすぎていないか。
- 結果を期待する欲をかいてしまっていないか。
- 結果を恐れていないか。
- 結果に翻弄されていないか。
- 結果の善悪に囚われていないか。
努力をしたから良い結果になる考え方ではなく、その時その時の行いが大事で、努力するという1歩を踏み出した時点で、成長している事実を大切にしています。 link
当たり前のようでいて、これがどうも私たちの仕事の前提とは相性が悪い。
コンサルティングという営みは、構造的に因と果を分けることを是としている。分析とはそもそも、物事を分けることに他ならない。原因と結果を分け、時系列を分け、空間を分け、要因を分け、責任を分ける。そうやって因果の糸を一本一本引き剥がして、構造を明らかにしていく。これはある種の知的作法であり、価値提供の型でもある(と私たちは信じている)。
だが最近、この「因果分離の快感」に耽溺しすぎていないか?と思うことがある。
「この施策をやったので、こういう成果が出ました」。この種のわかりやすいストーリーは社内外で好まれる。再現性、因果律、それに基づくPDCA、コンサルタントは(これらが本質的に何を意味するかをりかいしないまま)わかりやすさを担保する記号としてこれらを顧客に売り込む。しかし実際の世界はそこまで親切ではない。因と果は錯綜し、むしろ同時に生まれたとしか言いようのない事象ばかりなのだ。”それは鶏卵ですね”と口にしたくなるシーンがいかに多いことか。
成果が出たから因が美化されたのか、因が確かにあったから果が出たのか、それともその二つはそもそも一体だったのか。分析的な構えに依存していると、こうした因果一如的な現象に触れたとき、途端に手詰まりを起こす。問いの構造が崩れてしまうからだ。
では、私たちは因果を分けずに仕事ができるか?
たとえば、施策のインパクトを証明するのではなく、その施策が“その場の必然”として生まれてきた文脈ごと提示する。要因分解ではなく、関係の総体として捉える。説明ではなく、納得として提示する。そんなアプローチは可能だろうか。
これは簡単な話ではない。自他が信じるロジックモデルや顧客のKPIツリーを否定することにも繋がるからだ。しかし、それでもなお因果一如的な視点に開かれていたいと、最近強く思う。
因果を分けずに語ること。分けてはいけない関係を、無理に分けないこと。そのときコンサルタントは、何を媒介し、どこでバリューを出せるのか。答えは出ていないし出そうな気配もない。だが、それでも一度この思考に足をつっこみ、心の奥に違和感をおいておきたかった。これからも私の中で錯誤は続くと思う。
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