試考錯誤:コンサルタントはお節介とスコープの間で苦しむべき
「これはスコープ外ですね」
このセリフ、誰が最初に言ったのだろう。コンサルタントの現場では、まるで呪文のように使われる。「業務範囲を明確に」「リソースを適切に配分して」…まことに正論である。でも、この言葉を多用し始めたら、どこかに“お節介の火”が消えている。
コンサルタントという仕事の本質は、「頼まれてもないのに考えすぎてしまう」にある。たとえば、顧客から「来期の事業計画を整理して」と言われたら、つい「そもそもこの会社、どんな歴史と経緯でこの事業を持っているんだっけ…?」と頭を働かせる。それがたとえ、そんなことは依頼分の中に一行もなくてもだ。
もちろん、完全に暴走すると迷惑でしかない。頼んでもないのにPowerPoint100枚。しかも全てAppendix行き。これが“お節介過剰”の副作用だ。ただし逆に、「言われたことしかやらない」姿勢が徹底されると、それはもはや“人間型検索エンジン”でしかない。作業マシンはコンサルタントと名乗るべきではない。(コンサルファームの中に作業マシンがいてもいいとは思う)
いいコンサルタントというのは、常にこの「お節介」と「スコープ」の間で葛藤する。お節介したくてたまらない気持ちを抑え、仕様書・契約書の行間にじっと目をこらす。でも、たまに誘惑に負けてしまう。そしてその“逸脱”が、意外とクライアントの信頼を得るのだ。そこまで考えてくれてたのかと。優秀なコンサルタントほど「スコープ違反ギリギリ芸」を持っている。ファームや上司に怒られない範囲でスコープを逸脱し、その逸脱をときに、人によっては確実に顧客の価値に変えてみせる。
このジレンマは、特に“空気を読む”文化が強い日本では、極めて厄介である。何がスコープか、誰も正確には把握していないのに、「察して線引け」が要求される。仕様書ではなく、陰影礼賛で管理されているのだ。
そんな曖昧な環境で、どう動くべきか。私の答えは「答えなどない。苦しむべき」である。スコープに忠実な自分と、勝手にストーリーを膨らませる自分が、脳内で取っ組み合いをしている状態が、たぶんちょうどいい。その中で、「これは出しゃばりすぎかな…でも言うか」と、一歩踏み出すことがある。そういう瞬間に、本当の付加価値が宿る。
人間という生き物は、“余計なお世話”に救われるときがある。逆に、杓子定規な“正しさ”に突き放されるときもある。だから、コンサルタントの矜持とは、常に「余計かもしれないけど言わせてもらう」という、あの微妙な瞬間にこそあるのだ。
優秀なコンサルタントほど、ずっと悩んでいる。スコープ通りやるべきか、ついでにもう一声かけるべきか。そして悩んだ末、「すいません、勝手にやっちゃいました」と言うとき、そこにちょっとした美学がある。そんなコンサルタントに会うことがあったなら、少しいらついたとしても、優しく接してあげてほしい。
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